その紘の言葉に呼応したように、有は決意を固める。
「『レギオン』と『カーラ』の者達の動きが加速するということは再び、望と愛梨、そしてリノアに危険が及ぶかもしれない。もはや、猶予はないようだ。まずは美羅の残滓を介して、機械都市『グランティア』に赴く必要があるな」
「有。君は人使いが荒い上に、全く効率的ではない。そもそも、今は愛梨とリノアを守り抜いたばかりだ。この状態で行っても、機械都市『グランティア』に赴いた瞬間、返り討ちに遭うのが目に見えている」
有の提案に、奏良は懐疑的である。
だが、それでもこの状況を打破するためには、それしかないと奏良は悟った。
「機械都市『グランティア』は敵の本拠地だ。入念に準備してから乗り込むべきだ」
「いよいよ、機械都市『グランティア』に乗り込んだね」
赤みがかかった髪を揺らした花音が、やる気満々で奮起する。
「愛梨ちゃん、大丈夫だよ」
「花音」
「一緒に頑張ろう」
「……うん」
花音が励ますように告げると、愛梨は恐る恐るうなずいた。
「大丈夫。絶対に大丈夫。愛梨ちゃんは、これからも私達の仲間だよ!」
「……うん」
両手を握りしめて言い募る花音に熱い心意気を感じて、愛梨は花が綻ぶように無垢な笑顔を浮かべる。
その様子を見守っていた徹が、屈託のない様子でつぶやいた。
「機械都市『グランティア』の戦いの行方は、俺達の想いの強さにかかっているのかもな」
理想に彩られた現実世界の中で、花音と愛梨の柔らかな笑顔だけが確かだった。
『キャスケット』と『アルティメット・ハーヴェスト』。
徹達の未来を変えてくれるかもしれない仲間達が、確かにそこにいた。
翌日、有の家に集まった望達は、携帯端末を操作して、『創世のアクリア』のプロトタイプ版へとログインする。
オリジナル版と同様に、目の前に広がる金色の麦畑や肌に纏わりつく風と気候も、まるで本物のように感じられた。
だが、有達のギルド『キャスケット』がある、湖畔の街、マスカットの街並みは閉散としていて人気は少ない。
唯一、見かけるのはNPCである店員の姿だけだった。
「お兄ちゃん。今日は機械都市『グランティア』に行けるのかな?」
「妹よ。残念だが、徹のーー『アルティメット・ハーヴェスト』の連絡待ちになる。俺達だけでは、高位ギルドである『レギオン』と『カーラ』の者達に太刀打ちすることは厳しいからな」
花音の戸惑いに、有は思案するように視線を巡らせる。
「ああ。機械都市『グランティア』に赴けば、戦いが終わるまでここに戻ってこられないかもしれない」
望は咄嗟にそう言ってため息を吐いた。
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