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留菜マナ
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第三百四十八話 地面を穿たんとばかりに降り注ぐ⑦

公開日時: 2022年7月1日(金) 16:30
文字数:1,310

今まで花音が主に目撃したのは有が使う『覇炎トラップ』、そして賢が使う『避雷針』だ。


『覇炎トラップ』。

杖が床に触れた途端、空中に炎のトラップシンボルが現れる。

相手がそれに触れた瞬間、熱き熱波が覆いかかるという代物だ。


『避雷針』。

それはメルサの森のクエストの報酬である『ネモフィラの花束』を素材に使って生成されるアイテムの一つだ。

いろいろな場所に仕掛けることができ、その場所に触れた者に一定のダメージとスタン効果を発生させる。

浮遊物が通り過ぎた際にも爆破する危険な代物だった。


「有。罠を仕掛けているのは『レギオン』と『カーラ』の方かもしれない」


盛り上がる望達の会話を背景に、奏良は冷静に精査する。


「確かにな。まずは相手の出方を知る必要があるな」

「有様。今回の戦場は街道です。モンスターと遭遇して戦闘になる可能性が高いのではないでしょうか?」


有の言葉に反応して、プラネットがとらえどころのない空気を固形化させる疑問を口にした。


「プラネットよ、恐らく、そうだろう。吉乃信也を始めとした『レギオン』と『カーラ』以外にも、モンスターの動きを視野に入れる必要があるな」


『朽ち果てた黄昏の塔、パラディアム』の闘いを想起させるような状況に、有は切羽詰まったような声で告げる。


王都『アルティス』の近くの街道ーー。


もしかしたら、以前のような三つ巴戦もあり得るかもしれない。


「よし、妹よ。『アルティメット・ハーヴェスト』の者達と合流した後、みんなで手分けして戦闘準備を整えるぞ!」

「うん」

「有。君は人使いが荒い上に、全く効率的ではない。突飛な作戦で打ち負かせるほど、『レギオン』と『カーラ』は甘くない。もう少し具体的な作戦を練り上げてほしかった」


有の方針に、望と花音が頷き、奏良は渋い顔で仕方なく承諾する。

目的地が定まった望達は街道に赴くために、歩を進めていった。






王都『アルティス』の近くの街道ーー。

長く続く街道の外には荒野が広がる不毛の地だった。

本来なら徘徊しているのはモンスター達だが、今は『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達がひしめいている。


天賦のスキル。

自身の武器が持つ特性を最大限に生かして、技を放つスキル。


魔術のスキル。

火、水、風、光、闇。

五大元素のうち、どれか、または複数を操り、世界を変革するスキル。


召喚のスキル。

契約した幻獣や精霊、モンスターを呼び出すスキル。


アイテム生成のスキル。

不完全な物質を、完全な物質へと錬成するスキル。

様々な道具を作り出す力で、錬金術に近いスキルとして用いられていた。


街道に陣形を組み上げている『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達は、四大スキルの使い手も全て揃っている。

その上、彼らは初心者などでは決してない。

全員が全員、中級者以上の実力の持ち主だ。

装備もまた充実していた。

高位ギルドである『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達は様々なダンジョンなどに赴いている。

彼らはそこで手に入れた適切かつ強力な装備を付けていた。

そんな連中がこぞって、望と愛梨を手に入れるために強固な防衛陣を築き上げている。


「すごい数だな」

「すごい数ね」


街の入り口から窺っていた望とリノアは盛大にため息を吐いた。

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