「いろいろと試すか。君はどんな手段を用いて美羅の残滓から聞き出すつもりだ」
奏良は腕を組み、少しだけ考えた様子をみせる。
「そもそも、美羅の残滓からあれ以上、情報が手に入るとは思えないな。君が考えている手段で問いただしても情報が得られるとは限らない」
「……おまえ、いつも一言多いぞ」
奏良が非難の眼差しを向けると、徹はきっぱりと異を唱えてみせた。
「とにかく、今の美羅は人智を超えた成長を遂げる『究極のスキル』そのものであり、時には特殊スキルの使い手の力を超えるほどの絶対的な力を持っている。残滓と化した思念でさえも、重要な鍵だったからな」
「そうだな。ただ、少なくとも、彼女には俺達に対して、敵意はなさそうだな」
「そうだね。ただ、少なくとも、彼女には私達に対して、敵意はなさそうだね」
その徹の言葉を聞いた瞬間、望とリノアは眸に決意の色を堪える。
一通りの会話が終わったところで、望達はログアウトをすることにした。
「ねえ、望くん。明日は愛梨ちゃんの日だよね?」
望は二階の部屋に赴き、プラネットにリノアのことを託す。
ログアウトフェーズに入った望とリノアを引き止めたのは花音の不安そうな声だった。
飛びつくような勢いで、花音は両拳を突き上げて聞いてくる。
「ああ。ただ、また、『レギオン』と『カーラ』の者達が愛梨に接触してくるかもしれないから油断はできないな」
「うん。ただ、また、『レギオン』と『カーラ』の者達が愛梨に接触してくるかもしれないから油断はできないね」
「そうだね」
望とリノアが苦虫を噛み潰したような顔で言うと、花音は寂しそうに俯いた。
「愛梨ちゃん、現実世界に戻ったらまた狙われるかもしれないんだね」
「そうだな」
「そうだね」
花音の気遣いに、望とリノアは殊更もなく同意する。
愛梨としても生きているためか、目覚めた途端、怯えて隠れる愛梨の姿が容易に想像できた。
愛梨の想いも、彼女の生前の記憶さえも、全てが自分の感情であり、記憶であるように感じている。
望にとって、愛梨は誰よりも自分に近い存在なのだろう。
「愛梨ちゃんとは仮想世界ではなかなか会えないから、今度こそ、現実世界で会いたいな」
花音を導くように……滲み出るように心に願いが湧いてくる。
花音は決して、望とリノアを――愛梨を見つめることをやめない。
三人は、彼女にとってかけがえのない存在なのだから……。
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