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留菜マナ
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第三百八話 夢の宿り木⑦

公開日時: 2021年9月17日(金) 16:30
文字数:1,335

「これでどうだ!」

「これでどう!」


望とリノアはそのまま、一瞬でかなめの懐に潜り込み、虹色の剣を横に薙いだ。

光の連なりが、剣筋とともに閃く。

かなめのHPは一気に減ったが、光の魔術の防壁を破壊するまでには至らない。


「望くんとリノアちゃんの力でも、壊せないなんて……」


花音は名残惜しそうな表情を浮かべると、かなめを見つめる。


「心配するな、妹よ。このまま攻め込めば、必ず勝機はある」

「うん。お兄ちゃん、そうだね」


杖を構えた有の宣言に、花音は人懐っこそうな笑みを浮かべて答えた。


「ここで諦める選択を選ぶなんて、私達らしくないもん」

「そうだな」

「そうだね」


予測できていた花音の答えに、望とリノアは笑みの隙間から感嘆の吐息を漏らす。


「俺達が勝つためには、この状況を打破するしかないな」

「私達が勝つためには、この状況を打破するしかないね」

「うん」


望とリノアの決意の宣言に、花音は意図して笑みを浮かべてみせた。


「貫け、『エアリアル・アロー!』」

「くっ……!」


奏良が唱えると、無数の風の矢が襲いかかり、かなめの援護に向かおうとしていた『レギオン』のギルドメンバー達の行く手を足止めする。


「「なら、さらに叩き込んでみせる!」」


望とリノアは身体を回転させ、遠心力に乗せて剣を振る。

そして、疾駆の速さで、光の防壁を何度も肉薄した。


『クロス・レガシィア!』

「ーーっ!」


望の剣戟が放たれると同時に、花音は協力技とばかりに天賦のスキルで間隙を穿つ。

隙を突いた花音のスキルに、ターゲットとなった賢は完全に虚を突かれた。


「不意討ちか……。勇太くんの発言も気になるな」


賢はすかさず、剣に絡みつこうとした花音の鞭を弾き返す。

距離を取った賢は望達の動きに警戒を示した。


「絶対にリノアを元に戻してみせる! だから、ここから先には行かせない!」

「君達の狙いが何であれ、私達は君達をここで逃がすつもりはない。特殊スキルの使い手達は、美羅様が生きるために必要な存在だからな」


迫ってきた勇太の大剣を弾くと、賢は応戦するように接近する。


「賢様!」

「行きます!」


間一髪で難を逃れたかなめの虚を突くように、今度はプラネットが蹴りを放ち、光の魔術の防壁に攻撃を重ねる。


「プラネットちゃん、さらに行くよ!」

「はい!」


花音とプラネットの息の合った連携攻撃。

それは、『キャスケット』の絆の証。

花音とプラネット、二人のコンビネーションはかなめを前にして獅子奮迅の活躍を見せていった。

絶え間ない攻撃を前にして、かなめを護る光の魔術の防壁の罅が広がる。


「これで終わりだ!」

「これで終わり!」


『レギオン』のギルドメンバーの魔術のスキルの使い手達が放った炎の連撃をかわすと、望とリノアは乾坤一擲のカウンター技を放つ。

望とリノアの声に反応するように、それぞれの剣からまばゆい光が収束する。

蒼の剣の刀身が燐光(りんこう)を帯びると、かってないほどの力が満ち溢れた。


「「はあっ!」」


望とリノアはその一刀に全てを託し、かなめに向かって連なる虹色の流星群を解き放つ。

望の特殊スキルと愛梨の特殊スキル。

それが融合したように、かなめに巨大な光芒が襲いかかる。


「ーーっ」


望とリノアの強烈な一撃を受けて、かなめを護っていた光の魔術の防壁が高い音を立てて壊れていった。

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