光の魔術を用いた『再生能力』の付与。
しかも、かなめの魔力が続く限り、『カーラ』のギルドメンバー達が召喚したモンスター達は再生する。
愛梨の特殊スキル『仮想概念(アポカリウス)』は、かなめの光の加護の効果を消し去ったことができた。
だからこそ、かなめはこの状況下で、光の加護の付与を行ってきたのだろう。
望が愛梨に変わるきっかけを作るためにーー。
「魔力が尽きるのを待つのは得策じゃないな」
「魔力が尽きるのを待つのは得策じゃないね」
望とリノアは剣を構え、活路を見出だすために周囲を見渡した。
包囲を崩そうとしても、すぐに強固な陣形を組まれてしまう。
しかし、これ以上、召喚されたモンスター達に再生能力を付与させないためにも、かなめの目を誘導してしなくてはならない。
「君の光龍で状況を改善できないのか?」
「光龍が思いっきり攻撃したら、部屋が崩壊してここから出られなくなるだろう!」
奏良が非難の眼差しを向けると、徹はきっぱりと異を唱えてみせた。
「ただ、先に光龍を呼び出したことは吉と出たな。召喚のスキルの使い手達が骨竜を召喚したら、この部屋が崩壊する可能性がある。少なくとも、巨体のモンスターを召喚することを躊躇うはずだ」
徹は置かれた状況からそう判断する。
「何とかして、彼女の動きを止めないとな」
「何とかして、彼女の動きを止めないとね」
望とリノアが駆け出し、かなめに向かって一閃したーーその瞬間だった。
「「ーーっ」」
リノアの位置が移動し、望と対面するかたちへと変えられる。
望とリノアの鍔迫り合いは一瞬で終わり、高い音を響かせて離れた二人は、そこから驚異的な剣戟の応酬を見せた。
互いの剣技は、きっちり打ち消し合う一閃で処理される。
高度で複雑な剣閃の応酬。
だが、それはリノアの座標をずらされることで、かなめには届かない。
「「ーーっ!」」
このまま続けても埒が明かない状況に、望とリノアは咄嗟に急制動をかける。
「美羅様のご加護がある限り、あなた方は私に触れることはできません」
その時、凛とした声が部屋に響き渡った。
前に進み出たかなめは、無感動に望を見つめる。
「あなた方が女神様とシンクロすることで、あまねく人々を楽園へと導くことができるのです。これからあなたがおこなう功績は、未来永劫、称えられるでしょう」
かなめは両手を広げて、静かな声音で告げた。
「さあ、蜜風望、そして椎音愛梨。女神様のために、その全てを捧げなさい。あなた方の意思は、未来永劫、女神様の意思へと引き継がれていくのですから」
「悪いけれど、俺の答えは変わらない」
「悪いけれど、私の答えは変わらない」
かなめの宣言に、望とリノアは不満そうに表情を歪めた。
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