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留菜マナ
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第四百六十話 死者殺しの魔術士⑦

公開日時: 2024年3月11日(月) 16:30
文字数:1,094

光の魔術を用いた『再生能力』の付与。

しかも、かなめの魔力が続く限り、『カーラ』のギルドメンバー達が召喚したモンスター達は再生する。


愛梨の特殊スキル『仮想概念(アポカリウス)』は、かなめの光の加護の効果を消し去ったことができた。


だからこそ、かなめはこの状況下で、光の加護の付与を行ってきたのだろう。


望が愛梨に変わるきっかけを作るためにーー。


「魔力が尽きるのを待つのは得策じゃないな」

「魔力が尽きるのを待つのは得策じゃないね」


望とリノアは剣を構え、活路を見出だすために周囲を見渡した。

包囲を崩そうとしても、すぐに強固な陣形を組まれてしまう。

しかし、これ以上、召喚されたモンスター達に再生能力を付与させないためにも、かなめの目を誘導してしなくてはならない。


「君の光龍で状況を改善できないのか?」

「光龍が思いっきり攻撃したら、部屋が崩壊してここから出られなくなるだろう!」


奏良が非難の眼差しを向けると、徹はきっぱりと異を唱えてみせた。


「ただ、先に光龍を呼び出したことは吉と出たな。召喚のスキルの使い手達が骨竜を召喚したら、この部屋が崩壊する可能性がある。少なくとも、巨体のモンスターを召喚することを躊躇うはずだ」


徹は置かれた状況からそう判断する。


「何とかして、彼女の動きを止めないとな」

「何とかして、彼女の動きを止めないとね」


望とリノアが駆け出し、かなめに向かって一閃したーーその瞬間だった。


「「ーーっ」」


リノアの位置が移動し、望と対面するかたちへと変えられる。

望とリノアの鍔迫り合いは一瞬で終わり、高い音を響かせて離れた二人は、そこから驚異的な剣戟の応酬を見せた。

互いの剣技は、きっちり打ち消し合う一閃で処理される。

高度で複雑な剣閃の応酬。

だが、それはリノアの座標をずらされることで、かなめには届かない。


「「ーーっ!」」


このまま続けても埒が明かない状況に、望とリノアは咄嗟に急制動をかける。


「美羅様のご加護がある限り、あなた方は私に触れることはできません」


その時、凛とした声が部屋に響き渡った。

前に進み出たかなめは、無感動に望を見つめる。


「あなた方が女神様とシンクロすることで、あまねく人々を楽園へと導くことができるのです。これからあなたがおこなう功績は、未来永劫、称えられるでしょう」


かなめは両手を広げて、静かな声音で告げた。


「さあ、蜜風望、そして椎音愛梨。女神様のために、その全てを捧げなさい。あなた方の意思は、未来永劫、女神様の意思へと引き継がれていくのですから」

「悪いけれど、俺の答えは変わらない」

「悪いけれど、私の答えは変わらない」


かなめの宣言に、望とリノアは不満そうに表情を歪めた。

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