兄と妹とVRMMOゲームと

留菜マナ
留菜マナ

第四百六十五話 光を欺く④

公開日時: 2024年3月29日(金) 16:30
文字数:1,039

かなめの狙いは以前変わらず、美羅の真なる覚醒のために望と愛梨を捕らえることだ。

逆にそれを利用すればいいという望達の結論さえも、かなめの意思を突き動かす。


椎音愛梨に特殊スキルを使わせるーー。


その絶対目的を叶えるために、今までかなめ達は最善な方法を模索してきた。

だが、かなめ達が如何(いか)にあらゆる策を弄(ろう)しても、紘の特殊スキル『強制同調(エーテリオン)』によって見抜かれてしまう。

しかも、現実世界が理想の世界へと変わり、美羅の特殊スキルの力が働いた今でもプライバシー制度は行われている。

それは紘達、『アルティメット・ハーヴェスト』が、『レギオン』と『カーラ』から愛梨とリノアを守るために行っていることだった。


「光龍、目障りな!」


立ち塞がった光龍を前に、『カーラ』のギルドメンバー達が不愉快な顔を浮かべて警戒した。


「よし、行け!」


光龍とかなめが相対する中、徹は光龍を使役する。

徹が行使する光龍は、身体を捻らせてかなめへと迫った。

だがーー。


「ーーっ」


だが、別のモンスターの群れが不意を突いて包囲してきたことで、光龍は動きを阻まれる。


「徹様!」


イリスはすかさず徹の加勢に向かう。

躍動する闇と槍の光が入り乱れる戦場を、イリスは凄まじい速度で上空から駆ける。

彼女の繰り出す斬撃は早く鋭く、光龍を包囲しているモンスターを切り裂いていく。


「あなた方はここに来る前に、十分な作戦を立ててこられたようですね」

「その割には随分と余裕ですね」


かなめの言葉に呼応するように、気迫の篭ったイリスの声が響き渡る。


「お兄様の時と同じ戦法では、私達を倒すことは叶いません。私の『明晰夢』の力は……少し特殊ですから」

「……その余裕、必ず失わせてみせます」


柔らかい表情も、向けられる感情も、穏やかだ。

だが、どこかしら……影が、残っている。

かなめの言葉に、槍を振りかざしたイリスは不満そうに表情を歪めた。


「蜜風望と久遠リノア……。そして、いまだに姿を見せていない椎音紘と椎音愛梨」


そこでかなめは戦況を見据えている望とリノアに気づいた。

今のところ、望達には目立った動きはない。

だが、まるで勘案するかのようにかなめを見据えている。


「この状況から、あなた方はどう動くのでしょうか?」


この部屋を秘密を探ることを狙っているのか――それとも信也の時と同じように、『かなめに内在する懸念』を顕在化させようとしているのか。

それはいまだ分からないが、かなめは徹達だけではなく、望達の動向も警戒しておかねばならないと判断していた。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート