かなめの狙いは以前変わらず、美羅の真なる覚醒のために望と愛梨を捕らえることだ。
逆にそれを利用すればいいという望達の結論さえも、かなめの意思を突き動かす。
椎音愛梨に特殊スキルを使わせるーー。
その絶対目的を叶えるために、今までかなめ達は最善な方法を模索してきた。
だが、かなめ達が如何(いか)にあらゆる策を弄(ろう)しても、紘の特殊スキル『強制同調(エーテリオン)』によって見抜かれてしまう。
しかも、現実世界が理想の世界へと変わり、美羅の特殊スキルの力が働いた今でもプライバシー制度は行われている。
それは紘達、『アルティメット・ハーヴェスト』が、『レギオン』と『カーラ』から愛梨とリノアを守るために行っていることだった。
「光龍、目障りな!」
立ち塞がった光龍を前に、『カーラ』のギルドメンバー達が不愉快な顔を浮かべて警戒した。
「よし、行け!」
光龍とかなめが相対する中、徹は光龍を使役する。
徹が行使する光龍は、身体を捻らせてかなめへと迫った。
だがーー。
「ーーっ」
だが、別のモンスターの群れが不意を突いて包囲してきたことで、光龍は動きを阻まれる。
「徹様!」
イリスはすかさず徹の加勢に向かう。
躍動する闇と槍の光が入り乱れる戦場を、イリスは凄まじい速度で上空から駆ける。
彼女の繰り出す斬撃は早く鋭く、光龍を包囲しているモンスターを切り裂いていく。
「あなた方はここに来る前に、十分な作戦を立ててこられたようですね」
「その割には随分と余裕ですね」
かなめの言葉に呼応するように、気迫の篭ったイリスの声が響き渡る。
「お兄様の時と同じ戦法では、私達を倒すことは叶いません。私の『明晰夢』の力は……少し特殊ですから」
「……その余裕、必ず失わせてみせます」
柔らかい表情も、向けられる感情も、穏やかだ。
だが、どこかしら……影が、残っている。
かなめの言葉に、槍を振りかざしたイリスは不満そうに表情を歪めた。
「蜜風望と久遠リノア……。そして、いまだに姿を見せていない椎音紘と椎音愛梨」
そこでかなめは戦況を見据えている望とリノアに気づいた。
今のところ、望達には目立った動きはない。
だが、まるで勘案するかのようにかなめを見据えている。
「この状況から、あなた方はどう動くのでしょうか?」
この部屋を秘密を探ることを狙っているのか――それとも信也の時と同じように、『かなめに内在する懸念』を顕在化させようとしているのか。
それはいまだ分からないが、かなめは徹達だけではなく、望達の動向も警戒しておかねばならないと判断していた。
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