望達、『キャスケット』。
賢達、『レギオン』。
徹達、『アルティメット・ハーヴェスト』。
『朽ち果てた黄昏の塔、パラディアム』のボス戦ーー。
三大ギルドの猛攻により、混戦状態になりながらも、モンスター達の数は徐々に減っていった。
「望くん、リノアちゃん、お願い!」
「ああ!」
「うん!」
先手を打った花音の合図に、跳躍した望とリノアが剣を振るい、モンスター達を木端微塵に打ち砕いた。
だが、さらに五体の影が、空中から襲いかかってくるのが見える。
「奏良よ、頼む」
「言われるまでもない」
有の指示に、奏良は弾丸を素早くリロードし、銃を構えた。
発砲音と弾着の爆発音が派手に響き、飛行モンスター達は次々と落ちていく。
「逃がしません!」
プラネットは吹っ切れた言葉ともに、両拳を落ちてきたモンスター達に叩きつけた。
それと同時に高濃度のプラズマが走り、爆音が響き渡る。
煙が晴れると、モンスター達は全て、焼き尽くされたように消滅していった。
そして、クエスト終了の時間まであと一分を切った時、最上階に溢れ返っていたモンスター達はようやく全て消滅した。
「わーい! 望くん、お兄ちゃん、奏良くん、プラネットちゃん、勇太くん、リノアちゃん、大勝利!」
「……っ。おい、花音」
「……っ。花音」
これ以上ない満面の笑みを浮かべて、駆け寄ってきた花音が望に抱きついた。
花音の突飛な行動に、望は身動きが取れず、窮地に立たされた気分で息を詰めている。
リノアもまた、戸惑ったように同じ動作を繰り返す。
「奏良、プラネットよ、やったな」
「ああ。途中で、『アルティメット・ハーヴェスト』が参戦してくれたおかげだ」
「マスターの力はすごいです」
有のねぎらいの言葉に、奏良とプラネットは恐れ入ったように答えた。
難攻不落だと思われたボスモンスター達を倒してしまった凄まじい力ーー特殊スキルの力と二大高位ギルドの片鱗を垣間見たような感覚。
奏良とプラネットは、特殊スキルと二大高位ギルドの力を改めて実感する。
『このクエストは終了しました。クエスト達成、おめでとうございます』
勝利を喜び合っていた望達の前に、クエスト終了のメッセージが表示された。
その瞬間、最上階のフロア全域に、うっすらと円の模様が刻まれる。
望達が気づいた時には、視界が切り替わり、『朽ち果てた黄昏の塔、パラディアム』の入口の前にいた。
外敵を拒むように塔の前で待ち構えていた、無骨なガーゴイル達はもういない。
やがて、目の前にある塔が、役目を終えたとばかりに徐々に消えていく。
「……クエスト、終了したんだね」
花音が複雑な心境で、消えゆく塔を見上げる。
間一髪のところでクエストを達成したという現実を見据えながら、望達は塔が消えていくのを見届けることしかできなかった。
「そろそろか……」
「「ーーっ」」
その時、曖昧だった思考に与えられる具体的な形。
振り返った望達は、賢が意味深な笑みを浮かべているのを見て思わず、身構える。
だが、賢は、剣呑な眼差しを向けてくる望達など眼中にないように、リノアの両親だけを見ていた。
柔和な表情。
だが、瞳の奥には確かな陰りがある。
「……賢様」
「……っ」
賢のその反応を見て、リノアの両親の背筋に冷たいものが走った。
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