「貫け、『エアリアル・アロー!』」
奏良が唱えると、無数の風の矢が襲いかかり、ベヒーモス達の行く手を足止めした。
「任せろ!」
そのタイミングで、勇太は身体を回転させ、遠心力に乗せて大剣を振る。
そして、疾駆の速さで、前方のベヒーモスを何度も肉薄した。
『クロス・レガシィア!』
勇太の剣戟が放たれると同時に、花音は協力技とばかりに天賦のスキルで間隙を穿つ。
隙を突いた花音のスキルに、ターゲットとなったベヒーモスは完全に虚を突かれた。
花音の鞭によって、宙に舞ったベヒーモスは凄まじい勢いで地面へと叩き付けられる。
しかし、起き上がったベヒーモスは応戦するように、レーザーの如き炎を放つ。
「わっ! 今度は、炎の閃光だよ!」
花音は慌てて鞭を戻すと、ベヒーモスから大きく距離を取った。
『グウウウウッ』
ベヒーモスは、自身に炎と風の魔力が混在した光を纏わせる。
『グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
ベヒーモスは吠えると、炎と風で荒れ狂った拳を、望達に向かって振り下ろした。
「うわっ!」
「いたっ!」
「くっーー」
「……っ」
「ーーっ」
ベヒーモスの振り下ろした拳に、望達は一斉に巻き込まれる。
迎撃が間に合わなかった望達は、それぞれの武器で対応し、どうにか死ぬことはなかったが、拳の勢いだけは殺しようもない。
HPを半分以上減らされた望達は大きく吹き飛ばされて、地面を転がった。
烈火のごとき剣幕を前に、望は咄嗟に焦ったように言う。
「有、このままじゃ埒が明かない」
「ああ、分かっている。とりあえず、みんな、一度、回復アイテムを使ってHPを回復させるぞ!」
有は腕を組んで考え込む仕草をすると、唸り声を上げるベヒーモスの様子を物言いたげな瞳で見つめた。
「妹よ。これで少し楽になるはずだ」
「うん。お兄ちゃん、ありがとう」
花音達は受け取った回復アイテムを手に戦線を離れると、そこで一息つき、回復アイテムを口に含む。
花音達は、HPを少しずつ回復させていく。
その間、望とリノア、そして勇太が波状攻撃を仕掛け、ベヒーモス達の注意を引いていた。
「望くん、リノアちゃん、勇太くん、お待たせ!」
「マスター、リノア様、勇太様、お待たせしてしまって申し訳ありません」
「状況が状況だからな。愛梨のために、全力を尽くさせてもらおう」
望とリノアと勇太の代わりに、花音とプラネットが前衛に立ち、後方で奏良が風の魔術を放つ。
「望、リノア、勇太よ、回復アイテムだ」
「ああ。有、ありがとうな」
「うん。有、ありがとう」
「ありがとうな」
有から手渡された回復アイテムを呑んだことで、望達のHPは少し回復した。
望達が前線に戻ると、ベヒーモスは瓦礫を薙ぎ払い、破壊の限りを尽くしていた。
互いの死力を尽くした超速の攻防。
陸と空、縦横無尽に攻撃の軌跡を描きながら戦う望達とベヒーモス達。
ありとあらゆる手を、持てる限りの様々な技を尽くす。
それでも、ベヒーモス達の攻勢は留まらなかった。
「ベヒーモス達を掻い潜り、先に進むのは困難みたいだ」
戦いの激化を予感させる戦局の中、牢獄への突破口を模索していた徹は、その難解さに目を瞠る。
「何とかして倒し切る必要があるな」
「そうなんだね……」
花音は名残惜しそうな表情を浮かべると、望達が対峙しているベヒーモス達を見つめた。
「はあっ!」
高く跳躍した勇太の大剣が、ベヒーモスに突き刺さる。
HPを示すゲージは少し減ったものの、いまだに青色のままだ。
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