ーー例え、世界が別つとも。
四人は決して逸れることがなきように手を握っている。
この蒼穹が、いつでも自分達を繋いでいてくれると信じているから。
「そうだろう? 美羅、それが君の望んだものの結果なのだから」
信也はこの状況に高揚していた。
美羅の望んだ世界なら誰しも苦しまなくていいから。
だから、一毅も美羅もお節介焼きだという思いを、せめて今だけは口にする。
それそのものを願いにはできないのなら、せめてもの、と。
想いを形にすることが出来ないから。
今はもういない彼女ーー美羅のために、この世界が創られたというのなら、私の役割はただ一つ、それを阻止しようとする者達の思考を変えることだーー。
「吉乃信也。君達の企みは私達が全力でそれを阻止する」
「ーーっ」
信也が攻勢に転じようとしたその時、紘が振りかざした槍が割って入ってくる。
鋭く重い音が響き、信也の身体が吹き飛ばされた。
連綿と続く攻防の中、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達が跳躍し、愛梨を捕らえようと迫る。
「愛梨に手を出すな!」
奏良は愛梨の前に立つと、絶え間なく弾丸を撃ち、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達の気を逸らそうとする。
数十発の風の弾が彼らの鎧に衝突し、大きくよろめかせた。
「愛梨に手を出させないからな!」
徹がそう叫ぶと、光龍はそれに応えるように重い唸りを上げて『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達に襲いかかった。
一筋の閃光が空を切り裂いて、彼らを大きく吹き飛ばす。
「……徹くんの光龍」
光竜が『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達を相手に戦う姿を目にして、愛梨は怯えるように肩を震わせていた。
不安そうに揺れる瞳は儚げで、震えを抑えるように胸に手を添える姿はいじらしかった。
望ならまず見せない気弱な姿に、花音は交戦していたモンスターから距離を取る。そして、愛梨のもとに駆け寄り優しく微笑んだ。
「愛梨ちゃん、大丈夫だよ。一緒にこの状況を打開しよう」
「……花音」
花音の殊勝な発言に、愛梨はそっと顔を上げる。
「徹くんの光龍、大丈夫かな?」
「うん」
泣き出しそうに歪んだ愛梨の表情を見て、花音は言葉を探しながら続ける。
「愛梨ちゃんが信じているなら、きっと大丈夫だよ」
「……ありがとう」
花音の励ましの言葉に、愛梨は花が綻ぶように無垢な笑顔を浮かべた。
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