「妹よ、何をするつもりだ?」
「ねえ、お兄ちゃん。愛梨ちゃんの特殊スキルが込められた鞭なら、メルサの森の戦いの時と同じような現象が発生するかもしれないよ?」
有の疑問に、花音は意図して笑みを浮かべてみせた。
「なるほど。愛梨の特殊スキルが込められた鞭を使えたら、モンスターを倒すだけではなく、吉乃信也を捕らえることもできるかもしれないな」
花音の言い分に、有は納得したように頷いてみせる。
メルサの森で花音の鞭が起こしたあの現象なら、高位ギルドの連合軍だとしても対処することは困難なはずだ。
「愛梨ちゃんがいる間は、みんなでレベルアップできるね!」
てきぱきと鞭を動かし、モンスターを翻弄しながら、花音は周囲に光を撒き散らすような笑みを浮かべる。
「……うん」
そんな花音の戦う姿を見て、杖を構えた愛梨は花が綻ぶように無垢な笑顔を浮かべた。
「残りMPが厳しい。風の魔術を付与するのは花音の鞭だけだ」
奏良は風の魔術を使い、花音の鞭に魔力を込めていった。鞭が変色していく。
「よーし、行くよ!」
裂帛の咆哮とともに、花音は力強く地面を蹴り上げた。
花音の鞭には奏良の弾丸と同様に、愛梨の特殊スキルが施されている。
特殊スキルの使い手を狙う、二大高位ギルドの猛攻に迫られた状態。
リノアを気絶させられたとはいえ、有達を取り巻く状況は何も変わっていない。
有達は二つの高位ギルドに攻められているという状況を打破するために賭けに出た。
それは愛梨の特殊スキルを生かして、徹とイリスを始めとする『アルティメット・ハーヴェスト』の行動を円滑に回すことによって、『レギオン』と『カーラ』、二大高位ギルドの猛攻に対抗していくというものだ。
「愛梨ちゃんに手出しはさせないよ!」
「うわっ!」
「くっ!」
率先して先手を打った花音は身を翻しながら、鞭を振るい、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達を翻弄する。
風の魔術による付与効果、そして、愛梨の特殊スキルの効果の影響で、鞭は舞い踊るように色鮮やかな彩を示す珠を生み出しながら技を繰り出す。
だが、相手は高位ギルドのプレイヤー達だ。
容易く攻撃を喰らってはくれない。
『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達は、花音が振るった鞭を身体を反らし紙一重でかわした。
「あっ……」
完全に虚を突いたはずの攻撃を避けられて、花音は唖然とする。
「今だ!」
その隙を突いて、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達のあらゆる属性の遠距離攻撃が花音を襲った。
投げナイフ、鎖鎌、ダガー、弓、魔術、召喚されたモンスターの咆哮。
全てを確認することが、不可能なほどの攻撃が一斉に花音に殺到する。
しかし、鞭から生み出された珠は全て輝線で繋がり、それらの攻撃から花音を護った。
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