「勇太くんはどんな技を覚えたんだ?」
「勇太くんはどんな技を覚えたの?」
「敵を一網打尽に出来る技だ」
望とリノアの問いかけに、勇太は躊躇いながらも応える。
「まあ、相手が相手だから効果があるとは言い切れないけれどな」
「そうなんだな」
「そうなんだね」
勇太は望達から目を逸らし、戸惑うようにつぶやいた。
作戦会議が一段落し、回復アイテム等で体力を回復させた後ーー。
「ここから先は上に続く階段になっている。だが、来る前に倒したモンスターは復活しているようだ」
慎重に為らざる得ない局面に、有はインターフェースで表示した『サンクチュアリの天空牢』のマップを視野に入れながら模索する。
上の階層に向かう前に、望達は装備やアイテムの最終確認をした。
「階段の途中で、モンスター達と戦うのは得策ではない。ここから、上のフロアまでのモンスターを一気に倒してしまうしかないな」
上の階層までの道筋を見下ろした有は覚悟を決める。
「望、リノア、勇太、妹よ。今回も、入口に待ち構えているモンスターを倒してほしい。徹、奏良、プラネットは、俺とともに上のフロアに行くまでの活路を切り開いてほしい」
「ああ」
「うん」
「螺旋階段上で戦うよりはマシか」
有の方針に、剣を構えた望とリノアが頷き、奏良は渋い顔で承諾した。
「よーし、一気に行くよ!」
花音は跳躍し、入口を塞いでいるモンスター達へと接近した。
『クロス・リビジョン!』
今まさに望達に襲いかかろうとしていたモンスター達に対して、花音が天賦のスキルで間隙を穿つ。
花音の鞭に搦(から)め取られた瞬間、鞭状に走った麻痺の痺れによって、モンスター達は身動きを封じられた。
「望くん、リノアちゃん、勇太くん、お願い!」
「ああ!」
「うん!」
「任せろ!」
花音の合図に、跳躍した望とリノアが剣を振るい、モンスター達を木端微塵に打ち砕いた。
残りのモンスター達は、勇太の大剣に切り刻まれて消滅する。
「奏良よ、頼む」
「言われるまでもない」
有の指示に、奏良は弾丸を素早くリロードし、銃を構えた。
発砲音と弾着の爆発音が派手に響き、螺旋状の階段途中に徘徊するモンスター達を次々と落ちていく。
「逃がしません!」
プラネットは吹っ切れた言葉ともに、両拳を落ちてきたモンスター達に叩きつけた。
それと同時に高濃度のプラズマが走り、爆音が響き渡る。
煙が晴れると、モンスター達は全て、焼き尽くされたように消滅していった。
だが、それでもモンスターは、行く手を阻むように跋扈している。
「お兄ちゃん、お願い!」
『元素復元、覇炎トラップ!』
先行した花音の合図に、有は襲いかかってきたモンスター達に向かって、杖を振り下ろした。
有の杖が床に触れた途端、空中に炎のトラップシンボルが現れる。
ボスモンスター達がそれに触れた瞬間、熱き熱波が覆い、炎に包まれた。
だが、モンスター達は炎を振り払い、襲いかかってくる。
「徹よ、頼む!」
「ああ」
有の指示に、徹は精霊を召喚した。
『我が声に従え、ララ!』
「ーーなっ!」
「ーーっ!」
徹の声と同時に、望達の目の前に光輝く精霊が現れる。
「ララ、モンスター達の動きを止めろ!」
「了解!」
金色の光を身に纏った人型の精霊。
妖精達とさほど変わらない体躯の精霊ララは、主である徹の指示に従ってふわりと飛来した。
「道を開けてもらうわよ!」
ララは浮遊したまま、モンスター達の行く手を塞いだ。
モンスター達が一斉に、ララに襲いかかる。
「そんな攻撃、意味ないわよ」
だが、それが放たれるよりも先に、ララは電光石火の早業で光の檻を生成させた。
モンスター達の逃げ道を塞ぐように、四方形の光の壁が具現化する。
「これで、しばらくは動けないよ」
モンスター達の咆哮をよそに、ララは得意げに腰に手を当てた。
ララは飛来して、徹の前で無邪気に笑う。
「徹。あたし、頑張ったよ」
「ララ、ありがとうな」
「えへへ……」
徹の称賛に、ララは嬉しそうに赤らんだ頬にそっと指先を寄せる。
「螺旋階段上での戦闘は避けられたな」
上の階層までたどり着いた有は、感嘆の吐息を漏らす。
「よし、このまま、上の階層まで行くぞ!」
「うん」
有の指示に真剣な口調で答えて、花音はまっすぐ螺旋階段上を見つめる。
螺旋階段を抜けた先には、望達が有達と合流したフロアが見受けられた。
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