兄と妹とVRMMOゲームと

留菜マナ
留菜マナ

第四百三十八話 異なる正義を盾に①

公開日時: 2023年12月25日(月) 16:30
文字数:1,262

「今回、君の出番はない。僕が愛梨を守るからな。ただひたすら、後方で部屋の位置特定をしてくれ」

「……おまえ、いつも一言多いぞ」


奏良の言及に、徹は恨めしそうに唇を尖らせる。


「徹くん、もう『サンクチュアリの天空牢』には行けるのかな?」

「ああ。索敵は既に済ましているからな」


花音が声高に疑問を口にすると、徹はイリスからの情報を確認しながら応える。


「なら、『アルティメット・ハーヴェスト』が収集したデータをもとに改めて、『サンクチュアリの天空牢』の情報を確認しなくてはならないな」


クエスト情報を散見していた有は、意味ありげに表情を緩ませた。


「プラネット、新しく構築された『サンクチュアリの天空牢』のダンジョンマップを表示してくれないか」

「プラネット、新しく構築された『サンクチュアリの天空牢』のダンジョンマップを表示してほしいの」

「はい。マスター、リノア様、こちらをご覧下さい」


望とリノアの指示に、プラネットは恭しく礼をする。

そして、軽い調子で指を横に振り、望達の目の前に『サンクチュアリの天空牢』のダンジョンマップを可視化させた。


『サンクチュアリの天空牢』のダンジョンは『シャングリ・ラの鍾乳洞』の上空にある浮き島だ。

基本、『シャングリ・ラの鍾乳洞』から飛行アイテムで飛んでいけば、浮き島までたどり着くことができるだろう。

だが、肝心の信也が作戦の指揮を執っていた場所は何処にも表示されていない。

ダンジョン全域の索敵、そして、紘の特殊スキルの力である程度の範囲までは絞れているとはいえ、それでも部屋の正確な位置までは分からなかった。

さらに部屋の探索中に、『レギオン』と『カーラ』の襲撃がある可能性が示唆される。


明晰夢の複合で構築された中級者用ダンジョンーー。


そんな中、居ても立ってもいられなくなったのか、花音が攻撃する際の身振り手振りを加えながら飛び跳ねた。


「徹くん、今回も『サンクチュアリの天空牢』にはたくさんの罠が仕掛けられたり、多くのモンスターが召喚されているのかな? どんなモンスターが現れても、私の天賦のスキルで倒してみせるよ!」

「花音。今回はあくまでも部屋に入る方法を突き止めることだ。ただひたすら、道を塞ぐ敵だけを倒してくれ」


花音が自信満々で告げると、奏良は呆れたように有に目配りする。

有はそれに応えるように、インターフェースを操作して、『サンクチュアリの天空牢』の攻略情報を表示させた。


「妹よ。残念だが、奏良の言うとおり、今回はあの部屋の調査が目的だ。モンスターが現れた時のみ、戦闘を行うつもりだぞ」

「……そ、そうだったね」


自身のアイデンティティーを否定されて、花音は落胆する。


「だが、確かに新たに構築されたダンジョンというものは、どう変わったのか気になってしまうな。そして、空の上にあるため、『飛行アイテム』を生かせるダンジョンだ」

「お兄ちゃん。『サンクチュアリの天空牢』に行くためには、『シャングリ・ラの鍾乳洞』から上空に飛べばいいんだよね」

「その通りだ、妹よ」


喜び勇んだ妹の意を汲むように、有は自身の考えを纏めた。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート