「ああ、これからもよろしくな」
「勇太くん、頑張ろうね」
望と花音は吹っ切れたように、勇太の申し出を承諾した。
「そういえば、リノアは二階にいるのか?」
「ああ。俺と同じ言動を繰り返している。今は、有のおばさんが見てくれているはずだ」
勇太の疑問に、望は真剣な眼差しで捕捉する。
有の母親はプラネットの報告を聞いた後、リノアの様子を見守るために二階に上がっていた。
その言葉を聞いて、勇太は自身の希望を口にした。
「まだ、徹からの連絡は来ていないよな。その前にリノアに会ってきてもいいか?」
「勇太よ、もちろんだ。ただ、望と一緒に行った方が、ここに連れて来やすいだろうな」
そんな彼の意を汲むように、有は自身の考えを纏める。
「分かった。望、一緒に来てもらえるか?」
「ああ」
「望くん、勇太くん、私もリノアちゃんのところに行きたい」
勇太の誘いに、立ち上がった望は肯定した。
それに花音も付き添い、二階へと上がっていく。
望達が部屋に入ると、リノアは有の母親に支えられながらベッドの縁に座って力なく頭を垂れていた。
リノアに近づいた勇太は躊躇うように訊いた。
「リノア、大丈夫なのか?」
勇太が呼びかけても、リノアからの反応はない。
状況を察した望は花音とともにリノアのもとに寄り添う。
「ああ」
「うん」
望の言葉に反応するように、顔を上げたリノアは答える。
勇太の目の前にいるのは確かにリノアだ。
それなのに、まるでどこか得体の知れない相手と対峙しているような気分に襲われた。
望と同じリノアの表情が、どうしようもなくそれを証明する。
それでも先程までの虚ろな表情とは異なり、リノアは柔らかな笑みを浮かべていた。
「そうか」
リノアの様子に、勇太は表情をこれ以上ないほど綻ばせる。
感情を曝け出し、己の想いを口にするならば、勇太が告げるのはいつだって同じ誓いだ。
「おじさん、おばさん!」
勇太は後方に控えていたリノアの両親に視線を向けると、真剣な眼差しで訴える。
「今度こそ、絶対にリノアを救い出そうな!」
「ああ」
「ええ」
勇太の意気込みに、リノアの両親は決意を込めて応えた。
幼い頃の勇太は毎日が楽しくて仕方がなかった。
日々、大好きな幼なじみのリノアと遊んで、家に帰れば優しい笑顔で家族が迎え入れてくれる。
そんな当たり前の幸せな日々。
これからもそんな日々が続くと思っていた。
『勇太くん』
大輪の向日葵のような、思わず目を奪われるリノアの笑顔。
俺は幼い頃からリノアが好きだった。
時が廻り、季節が廻っても、この思いだけは変わらない。
リノアに伝えたい想いはたくさんある。
これから長い時を一緒に過ごすたびに、それは増えていくのだろう。
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