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留菜マナ
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第四百八十六話 君の心に降るのは①

公開日時: 2024年6月10日(月) 16:30
文字数:1,016

その時、光龍に乗って、突き抜けるように天井へと駆け上がってきたのは徹と勇太だった。


「望、リノア!」

「ここに……この部屋の秘密を解くための鍵があるのか?」


かなめ達に遅れて、望達の後を追っていた徹と勇太は最上部にたどり着く。


「望達に手を出させないからな!」


徹がそう叫ぶと、光龍はそれに応えるように重い唸りを上げて『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達に襲いかかった。

一筋の閃光が空間を切り裂いて、彼らを大きく吹き飛ばす。

徹が行使する光龍は、身体を捻らせてかなめへと迫った。

だがーー。


「ーーっ」


だが、別のモンスターの群れが不意を突いて包囲してきたことで、光龍は動きを阻まれる。


「徹様!」


イリスはすかさず徹の加勢に向かう。

躍動する闇と槍の光が入り乱れる戦場を、イリスは凄まじい速度で上空から駆ける。

彼女の繰り出す斬撃は早く鋭く、光龍を包囲しているモンスター達を切り裂いていく。


「光龍、目障りな!」


立ち塞がった光龍を前に、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達が不愉快な顔を浮かべて警戒した。


「よし、行け!」


彼らが光龍と相対する中、徹は光龍を使役する。

連綿の攻防の最中ーー。


「蜜風望と久遠リノア……。そして、いまだに姿を見せていない椎音紘と椎音愛梨」


そこでかなめは少女をーー美羅の残滓を見据えている望とリノアに気づいた。

今のところ、望達には目立った動きはない。

だが、まるで勘案するかのようにかなめを見据えている。


「この状況から、あなた方はどう動くのでしょうか?」


この部屋を秘密を探ることを狙っているのか――それとも信也の時と同じように、『かなめに内在する懸念』を顕在化させようとしているのか。

それはいまだ分からないが、かなめは徹達だけではなく、望達の動向も警戒しておかねばならないと判断していた。


「美羅様の残滓が、この部屋の秘密を解くための鍵になります」


かなめは両手を広げて、静かな声音で真実を突きつけてくる。


「美羅は、特殊スキルであるーー究極スキルそのもの。だから、俺達、特殊スキルの使い手とシンクロすることで、彼女は目覚め、俺達と同じ動作をするんだな」

「美羅は、特殊スキルであるーー究極スキルそのもの。だから、私達、特殊スキルの使い手とシンクロすることで、私は目覚め、私達と同じ動作をする」


前に紘が語った真実を思い返して、望とリノアは噛みしめるように反芻する。

ただ、今は、濁流みたいに押し寄せてくる感情に耐えるだけで精一杯だった。

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