特殊スキル。
世界を牛耳る力と謳われ、現実世界をも干渉する力。
そして、全ての世界そのものを改変させることすら可能な、万能の力。
世界の根源へと繋がる話に、奏良はふと座りの悪さを覚える。
「吉乃信也の裏をかく案。僕は賛成することはできないな。そもそもこの状況でどうやってリノアの意識を失わせるんだ」
「美羅の器であるリノアは、『レギオン』と『カーラ』の者達にとって決して失うことができないカードだ。リノアが意識を失えば、一時的とは美羅の力は発動しない」
予測出来ていた奏良の言及に、紘は訥々と特殊スキルの力によって知り得ていることを語る。
紘の淡々と語った内容、しかし望達には額面以上の重みがあった。
リノアの意識を失わせる。
望は改めて、有が口にした案を脳内で咀嚼する。
美羅が求めているものは特殊スキルの使い手。
『レギオン』と『カーラ』の者達も同様に求めているものは望達、特殊スキルの使い手の力だ。
『レギオン』と『カーラ』の目論見は、愛梨に特殊スキルの力を使わせることによって、美羅の真なる力の発動させることだった。
だが、もしリノアの意識を失わせることができたら、愛梨の特殊スキル、『仮想概念(アポカリウス)を使うことができるかもしれない。
「奏良、プラネット、妹よ。吉乃信也のもとに行くまでの活路を切り開いてほしい」
「うん」
「はい」
「行き当たりばったりだな。まあ、この状況でリストの少ない案はないか」
有の方針に、それぞれの武器を構えた花音とプラネットが頷き、奏良は渋い顔で承諾した。
「よーし、一気に行くよ!」
花音は跳躍し、モンスター達へと接近した。
『クロス・リビジョン!』
今まさに望達に襲いかかろうとしていたモンスター達に対して、花音が天賦のスキルで間隙を穿つ。
花音の鞭に搦(から)め取られた瞬間、鞭状に走った麻痺の痺れによって、モンスター達は身動きを封じられた。
「望くん、リノアちゃん、お願い!」
「ああ!」
「うん!」
花音の合図に、跳躍した望が剣を振るい、飛行モンスター達を木端微塵に打ち砕いた。
だが、さらに三体の影が後方から襲いかかってくるのが見える。
「奏良よ、頼む」
「言われるまでもない」
有の指示に、奏良は弾丸を素早くリロードし、銃を構えた。
発砲音と弾着の爆発音が派手に響き、モンスター達は次々と葬り去られていく。
「行きます!」
裂帛の咆哮とともに、プラネットは力強く地面を蹴り上げた。
「はあっ!」
気迫の篭ったプラネットの声が響き、行く手を遮るモンスター達は次々と爆せていく。
だが、包囲を崩そうしても、すぐに強固な陣形を組まれてしまう。
「リノアの意識を失わせる方法と吉乃信也を捕らえる手段か……」
「私の意識を失わせる方法と吉乃信也を捕らえる手段……」
望とリノアは剣を構え、活路を見出だすために周囲を見渡す。
戦いは加熱していく。
リノアの意識を失わせる方法、そしてこの戦いを指揮している信也を捕らえることの難しさを改めて実感した。
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