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留菜マナ
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第百七十三話 忘れじの茸雲①

公開日時: 2021年3月10日(水) 16:30
文字数:1,428

『シャングリ・ラの鍾乳洞』での戦い。

望達は賢達を相手に、勇猛果敢に立ち向かっていた。


「貫け、『エアリアル・アロー!』」


奏良が唱えると、無数の風の矢が襲いかかり、『カーラ』のギルドメンバー達の行く手を足止めする。

しかし、一部の『カーラ』のギルドメンバーは、風の矢を軽々と払いのけると、奏良にそれぞれの武器を振りかざしてきた。


「なら、これでどうだ! 『エアリアル・ライカ!』」


奏良は、『朽ち果てた黄昏の塔、パラディアム』の中ボス、ベヒーモス戦を得て覚えた、新たなスキルを披露する。

奏良が放った無数の風の渦が、高速光線となって、縦横無尽に軌跡を描く。

予測できないランダム軌道の疾風に、『カーラ』のギルドメンバー達は虚を突かれた。


「よーし、一気に行くよ!」


飛び出した花音は勢いのまま、鞭を振るい、『カーラ』のギルドメンバー達へと接近する。


『クロス・レガシィア!』

「ーーっ」


今まさに奏良に襲いかかろうとしていた『カーラ』のギルドメンバー達に対して、花音が天賦のスキルで間隙を穿つ。

花音の鞭によって、宙釣りになった『カーラ』のギルドメンバー達は凄まじい勢いで地面へと叩き付けられた。


「くっ!」

「行かせません!」


かなめ達を護っていた隼達は援護に向かおうとするが、そこにプラネットの牽制となる打突が放たれる。

隼達は避けることが出来たが、味方の援護に向かえない。

プラネットが隼達を分断している隙に、有達は目の前の敵を確実に倒していった。






「蜜風望。あなたは、私がお相手します」


かなめは前に進み出ると、あくまでも事実として突きつけてきた。

対峙する望とリノアは一呼吸置いて、静かにそれぞれの剣を構える。


みんなを守る力がほしいーー。


それは、望自身のスキルを使えば叶うと信じている。

望とリノアは目を閉じて、愛梨の想いに応えようとした。

愛梨の想いに応える術はないのかもしれない。

今、この場で、特殊スキルを使うことができるとは限らない。

それでも、望は諦めなかった。


『……みんなの力になりたい』


不意に愛梨の声が聞こえた。

それは望を介し、望の意味が付与された愛梨の想い。


「ああ、そうだな。俺はーーいや、俺達は諦めない!」

「うん、そうだね。私はーーううん、私達は諦めない!」


顔を上げた望とリノアは、胸に灯った炎を大きく吹き上がらせた。

望とリノアは前を見据えて、この世界で、たった一つだけの自身のスキルを口にする。


『『魂分配(ソウル・シェア)!』』


そのスキルを使うと同時に、二人の剣からまばゆい光が収束する。

それぞれの剣からは、かってないほどの力が溢れていた。

望とリノアが剣を掲げると、さらなる輝きを発する。


「素晴らしいですね」

「これでどうだ!」

「これでどう!」


かなめが祈りを捧げるように両手を絡ませたその時、望とリノアは乾坤一擲の技を放つ。

望とリノアの声に反応するように、それぞれの剣からまばゆい光が収束する。

二人の剣の刀身が燐光(りんこう)を帯びると、かってないほどの力が満ち溢れた。


「「はあっ!」」


望とリノアはその一刀に全てを託し、かなめに向かって連なる虹色の流星群を解き放つ。

望の特殊スキルと愛梨の特殊スキル。

それが融合したように、かなめに巨大な光芒が襲いかかろうとした。


「「ーーっ!」」


しかし、望とリノアが放った流星の剣の一撃は、合わせ鏡のように互いが向き合ったことで相殺される。


攻撃の瞬間に、リノアの座標を変えたのか?


その一連の鏡写しのような同一動作を前にして、望は推測を確信に変えた。

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