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留菜マナ
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第三百七話 夢の宿り木⑥

公開日時: 2021年9月10日(金) 16:30
文字数:1,354

ここまでの『レギオン』のギルドメンバー達と『カーラ』のギルドマスターとの熾烈な戦い。

花音はこの戦いを帰結させる方法を模索する。


「お兄ちゃん。今、この場で転送石とかは使えないかな?」

「恐らく、今、この場で転送石などを使っても、『レギオン』はギルドまで追ってくるかもしれない。転送石ではなく転送アイテムを使って、距離を稼ぐ必要があるな」


花音の訴えに、有はインターフェースを使って、周辺の安全地帯を検索した。

この周辺には、先程まで居た『這い寄る水晶帝』、その近くに『ネメシス』のダンジョンがある。

そして以前、訪れた『シャングリ・ラの鍾乳洞』と『サンクチュアリの天空牢』が顕在していた。


「いや、俺はここでーーこの地で、決着をつけたい!」


大剣を携えた勇太は確固たる意思を示す。


「『レギオン』に体勢を立て直させるわけにはいかないからな」

「そうだな」

「そうだね」


予測できていた勇太の答えに、望とリノアは笑みの隙間から感嘆の吐息を漏らす。


「この場を乗り切るために、まずは吉乃かなめを倒すしかないな」

「この場を乗り切るために、まずは吉乃かなめを倒すしかないね」

「……うん。ここで決着をつけるんだったね」


徹達と合流した後、勇太が示したこの戦いの終着点。

望とリノアの決意の宣言とともに、花音は意図して笑みを浮かべてみせた。

有達のギルド『キャスケット』。

誰かと共にあるという意識は、追いつめられていてもなお、決して自分達が負けることはないという不屈の確信をかきたてるものだと望達は感じていた。


「波状攻撃に弱いのなら、俺の役割は一つだ」


勇太が目の前の『レギオン』のギルドメンバーを倒し、賢の眼前に迫る。


「勇太くん。君はかなめのもとに向かうのではなかったのかな?」

「ああ。だから、おまえの力を利用して、『カーラ』のギルドマスターを倒す!」


嘲笑うような賢の剣戟と一歩の引かない勇太の攻撃が交錯した。


「私の力を……?」


賢は勇太の狙いを見極めようとする。

しかし、その思考を打ち破るように、花音は一足飛びに跳躍した。


「とにかく、行くよ!」

「西村花音さん。また、あなたですか」


率先して先手を打った花音は身を翻しながら、鞭を振るい、かなめを翻弄する。


「喰らえ!」


そのタイミングで、奏良は距離を取って、続けざまに四発の銃弾を放った。

弾は寸分違わず、かなめが張った光の防壁に命中する。

しかし、罅が入ったものの、いまだに光の防壁は健在だ。

弾に魔力が籠っていても、数発程度ではどうにもならなかった。


「はあっ!」


高く跳躍したプラネットの拳が、光の防壁に突き当たる。

しかし、光の防壁は鉄よりも遥かに硬く、易々と破壊されてはくれなかった。

プラネットの一撃は、光の防壁に少し罅を入れただけで終わる。


「「これで決める!」」


望とリノアが構えた剣から、まばゆい光が収束する。

二人が携える剣からは、かってないほどの力が溢れていた。


「蒼の剣、頼む!」

「蒼の剣、お願い!」


花音達の前に出た望とリノアは、特殊スキルが込められた剣を構える。

流星のような光を放って、『レギオン』のギルドメンバーの魔術のスキルの使い手達の放った炎を流れるような動きで弾く。


「かなめには手を出させない……っ!」


勇太と徹の猛攻を振り切った賢が瞬接する。

しかし、望とリノアは迫ってきた賢の攻撃をもいなした。

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