『特殊スキルをどう使ったら、この世界から出られるんだ?』
『『創世のアクリア』の世界で愛梨と入れ替わる際、君の想いに応えるように愛梨の声が聞こえていたはずだ。それと同じように、今度は君が愛梨の想いに応えればいい』
長い沈黙を挟んだ後で、紘は淡々と答える。
驚きを禁じ得ない紘の発言に、望は不可解そうに首を傾げた。
『愛梨の想いに?』
『蜜風望、この世界から出られるかは君次第だ』
あの日の出来事を思い返していた望は考え込む仕草をした。
そこに意味があるように。
みんなを守る力がほしいーー。
それは、望自身のスキルを使えば叶うと信じている。
望は目を閉じて、愛梨の想いに応えようとした。
愛梨の想いに応える術はないのかもしれない。
この部屋の上部に何があるのかなんて分からない。
それでも、望は諦めなかった。
『……みんなの力になりたい』
不意に愛梨の声が聞こえた。
それは望を介し、望の意味が付与された愛梨の想い。
「ああ、そうだな。俺はーーいや、俺達は諦めない!」
「うん、そうだね。私はーーいや、私達は諦めない!」
顔を上げた望とリノアは、胸に灯った炎を大きく吹き上がらせた。
『アーク・ライト!』
「……っ!」
リノアの父親は光の魔術を使って、望とリノアの体力を回復させる。
『お願い、ジズ! 彼らに力を与えて!』
それと同時にリノアの母親も、自身の召喚のスキルで小さな精霊を呼び出し、望とリノアの攻撃力を上げた。
「リノア、望くん。私達も出来る限りの援護をしていくつもりだ」
「リノア、頑張って」
「「はい!」」
リノアの両親の懇願に、望とリノアは嬉しそうに笑みを零した。
今もまだ、奏良の風の魔術の効果は持続している。
望とリノアは大きく身体を動かすと、突き抜けるように有がいる天井へと駆け上がった。
「望、リノアよ!」
「有、残りの罠は俺達で何とかする!」
「有、残りの罠は私達で何とかする!」
望とリノアは前を見据えて、この世界で、たった一つだけの望自身のスキルを口にする。
『魂分配(ソウル・シェア)!』
そのスキルを使うと同時に、望とリノアの剣からはかってないほどの力が溢れていた。
「「はあっ!」」
望とリノアはその一刀に全てを託し、天井に向かって剣を振り下ろす。
その瞬間、望とリノアの剣戟に切り刻まれた空間が二つに切り裂かれる。
「「ーーっ」」
室内にまばゆい光が溢れると同時に、靄がかかったように、望達の視界が白く塗りつぶされていく。
天井に設置されていた罠が次々と消滅していくのを感じた。
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