「よし、奏良、プラネット、徹、勇太よ。ダンジョンに異常がないか、調べるぞ! 望、リノアよ、俺達が外観調査を行っている間、使い魔に戯れている妹の護衛を頼む。恐らく、妹は使い魔に夢中になって、戦闘を疎かにしかねないからな」
「「分かった」」
杖を手にしたまま、有は周囲に活を入れた。
有の指示の下、奏良達はダンジョンの外観を細心の注意を払いながら調べていく。
しかし、ダンジョンの奥から這い寄ってきたモンスター達が、望達に対して襲い掛かってきた。
「調査をしながら、モンスター達と戦うのは得策ではない。先に、モンスター達を倒してしまうしかないな」
ダンジョンの外観周辺の道筋を見つめていた有は覚悟を決める。
「まずは、ダンジョンの調査を行うための活路を切り開いてほしい」
「ああ」
「うん」
「調べながら、戦うよりはマシか」
有の方針に、それぞれの武器を構えた望とリノアが頷き、奏良は渋い顔で承諾した。
「よーし、一気に行くよ!」
花音は跳躍し、モンスター達へと接近した。
『クロス・リビジョン!』
今まさに望達に襲いかかろうとしていたモンスター達に対して、花音が天賦のスキルで間隙を穿つ。
花音の鞭に搦(から)め取られた瞬間、鞭状に走った麻痺の痺れによって、モンスター達は身動きを封じられた。
「望くん、リノアちゃん、お願い!」
「ああ!」
「うん!」
花音の合図に、跳躍した望とリノアが剣を振るい、モンスター達を木端微塵に打ち砕いた。
だが、さらに三体の影が空中から襲いかかってくるのが見える。
「奏良よ、頼む」
「言われるまでもない」
有の指示に、奏良は弾丸を素早くリロードし、銃を構えた。
発砲音と弾着の爆発音が派手に響き、モンスター達は次々と落ちていく。
「行きます!」
裂帛の咆哮とともに、プラネットは力強く地面を蹴り上げた。
「はあっ!」
気迫の篭ったプラネットの声が響き、迫り来るモンスター達は次々と爆せていく。
「徹よ、モンスターの動きを止めてほしい!」
「ああ」
有の指示に、徹は片手をかざし、精霊を召喚した。
『我が声に従え、ララ!』
「ーーなっ!」
「ーーっ!」
徹の声と同時に、望達の目の前に光輝く精霊が現れる。
「ララ、モンスター達の動きを止めろ!」
「了解!」
金色の光を身に纏った人型の精霊。
妖精達とさほど変わらない体躯の精霊ララは、主である徹の指示に従ってふわりと飛来した。
「道を開けてもらうわよ!」
ララは浮遊したまま、モンスター達の行く手を塞いだ。
モンスター達が一斉に、ララに襲いかかる。
「そんな攻撃、意味ないわよ」
だが、それが放たれるよりも先に、ララは電光石火の早業で光の檻を生成させた。
モンスター達の逃げ道を塞ぐように、四方形の光の壁が具現化する。
「これで、しばらくは動けないよ」
モンスター達の咆哮をよそに、ララは得意げに腰に手を当てた。
ララが封じ込めたモンスター達に対して、勇太は大剣を翻し、跳躍する。
『フェイタル・ドライブ!』
勇太が大きく大剣を振りかぶり、光の刃が波動のようにモンスター達へと襲いかかった。
万雷にも似た轟音が響き渡る。
「これでどうだ!」
迷いのない一閃とともに、勇太の強烈な一撃を受けて、モンスター達は消滅した。
「これで、ダンジョンの調査に集中できそうだな」
襲い掛かってきたモンスター達を全滅させてみせた望達の姿を見て、有は感嘆の吐息を漏らす。
望達は改めて、ダンジョンの調査へと乗り出した。
しかし、『這い寄る水晶帝』にはオリジナル版との違いは見当たらない。
「本当に、何も手がかりはないのか?」
承服できない勇太は、不満そうに周囲を見渡した。
勇太の視界の先では、奏良達がモンスター達と激しい戦闘を繰り広げている。
今回のダンジョンには、何の手がかりもないのだろうか。
ダンジョン内を視界に捉えた勇太の胸に、言いようのない不安が去来していた。
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