望達が立つ戦場に、周辺の爆風が鳴り響いた。
「「はあっ!」」
甘言蜜語を弄して取り入ろうとする賢達を前にして、望とリノアは先行する勇太の協力を得て応戦する。
望達と賢達の熾烈な攻防戦。
奏良は銃を構えながら、戦況の動きを見極めようとする。
奏良の視線の先には望とリノアが連携して、かなめと戦闘を繰り広げている姿があった。
「奏良よ、望達のサポートを頼む」
「言われるまでもない」
有の指示に、奏良は弾丸を素早くリロードし、かなめに向けて銃を構えた。
発砲音と弾着の爆発音が派手に響き渡る。
「後方からの掩護射撃ですか」
遠距離攻撃による一斉射撃。
後方から放たれる攻撃の数々を、かなめは光の魔術のスキルを用いて華麗にかわしていく。
「慌てる必要はありません」
『カーラ』のギルドマスターであるかなめは気持ちを静めると、無感動にモンスターを見上げた。
「かなめ様!」
「賢様は、私達に約束してくれました。女神様のーー美羅様のご加護を」
『レギオン』のギルドメンバー達の剣幕をよそに、かなめは静かな声音で告げる。
「ならば、私達はそれに報いる限りです」
かなめは子守歌のように言葉を紡ぐと、自身の魔術のスキルを発動させた。
『我が愛しき子よ』
かなめとモンスターの周りに、魔方陣のような光が浮かぶ。
『我が敵を滅ぼしなさい』
かなめが神々しくそう唱えると、光に包まれたモンスターは忠誠を誓うように頭を垂れた。
やがて、かなめの光の魔術のスキルによって、新たな力を得たモンスターは、相対する光龍を睥睨した。
今まで受けたダメージなどなかったように佇むモンスターを見据えて、徹は苦々しく唇を噛みしめる。
「……『再生能力』を付与させたんだな」
事態の急転を受けて、徹は状況を整理してみる。
『アルティメット・ハーヴェスト』が加勢に訪れたことで、望達に集中していた『レギオン』のギルドメンバー達の戦力は分散されていた。
だが、肝心のモンスターを倒して、望達をこの場から避難させられなくては意味はない。
向こうも、何かを企んでいるんだろうなーー。
こちらの心境を、相手側に悟られるわけにはいかない。
徹は冷静を装って、望達の戦局を視認する。
『レギオン』の召喚のスキルの使い手達が呼び出したモンスター。
空に浮いたそのモンスターは、見た目だけで言えば烏賊(いか)に似ていた。
巨大な身体に、無数の触手。
かなめの光の魔術のスキルの加護を受けたモンスターは、危害を加えてきた望達をゆっくりと睥睨する。
まるで、望達を敵と見定め、圧倒的な迫力を直に訴えかけてくるようだ。
圧倒的な能力が厚となって、望達の肌に突き刺さる。
「「はあっ!」」
「行くぜ!」
それでも、気迫と共に繰り出される望達と勇太の攻撃。
賢とかなめはそれを見切り、時にはリノアの座標を変え、的確に応戦しつつ分析する。
賢がかなめと合流するのを確認したニコットは単なる事実の記載を読み上げるかのような、低く冷たい声で宣告した。
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