『創世のアクリア』のプロトタイプ版を産み出した四人の開発者ーー。
『救世の女神』を産み出すという禁忌を犯したことで始まった戦いは、仮想世界だけではなく、現実世界までも浸食していった。
漠然とした想いのまま、徹達は理想の世界へと変わった現実世界での日々を過ごしている。
しかし、特殊スキルの使い手達だけではなく、一介のプレイヤーである自分にもできることはあるはずだ。
「だけど、どうすれば、美羅の残滓に証明することができるんだろうな」
「美羅ちゃんに証明? ーーあっ、望くんの特殊スキルなら、きっと……!」
その時、不意の閃きが花音の脳髄を突き抜ける。
美羅の残滓を眺めていた花音が興味津々な様子で訊いた。
「ねえ、望くん、リノアちゃん。望くんの特殊スキルの力を、美羅ちゃんの残滓に示したらどうかな?」
「……示す?」
「……示すの?」
花音のどこか確かめるような物言いに、望とリノアは不思議そうに首を傾げる。
「妹よ、何をするつもりだ?」
「ねえ、お兄ちゃん。美羅ちゃんと同化したリノアちゃんは、美羅ちゃんの残滓にとってはオリジナルの存在なんだよね。望くんが特殊スキルの力を示したら、リノアちゃんも同じように特殊スキルの力を示すことになるよ」
有の疑問に、花音は意図して笑みを浮かべてみせた。
「なるほど。美羅の残滓は、オリジナルの存在であるリノアに反応するかもしれないな」
花音の言い分に、有は納得したように頷いてみせる。
「なら、『サンクチュアリの天空牢』の情報の変化を確認しなくてはならないな」
周囲を散見していた有は、意味ありげに表情を緩ませた。
「プラネットよ、この部屋までの道のりを追加された『サンクチュアリの天空牢』のダンジョンマップを表示してほしい」
「はい。有様、こちらをご覧下さい」
有の指示に、プラネットは恭しく礼をする。
そして、軽い調子で指を横に振り、望達の目の前に『サンクチュアリの天空牢』のダンジョンマップを可視化させた。
『サンクチュアリの天空牢』のダンジョンは『シャングリ・ラの鍾乳洞』の上空にある浮き島だ。
しかし、ダンジョンマップには、いまだにこの部屋の位置は示されていない。
「この部屋は、俺達に知られると不都合な場所だと吉乃信也は言っていたな。だが、俺達はこの部屋までたどり着いた。それでも位置情報を表示させていないということは……」
「予め、位置情報を表示させないことを念頭に置いた可能性が高いな」
「予め、位置情報を表示させないことを念頭に置いた可能性が高いね」
有の言葉を引き継いで、望とリノアは納得したように頷いてみせた。
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