分からない。分からないけど。
これだけは確かだ。
「俺はリノアを救ってみせる!」
大切だった。勇太を導く光だった。
ただ、リノアが傍にいてくれるだけで強くなれた。
リノアの笑った顔も、泣いた顔も、恥ずかしがる顔も、ふて腐れた顔も、全てが愛おしいと感じる。
「だから頼む」
そう言う勇太の目には光るものが浮かんでいた。
「これからも傍にいると約束してくれないか?」
「ああ、約束だ」
「うん、約束」
勇太は望と同じ動作をするリノアと小指を絡める。二人で歩む未来はこれからも続いていくと、甘く確かな約束を求めて。
望達がリノアを連れて先程の部屋に入ると、有達は次に行くダンジョン、『サンクチュアリの天空牢』の目処を付けていた。
「『サンクチュアリの天空牢』。吉乃信也と吉乃かなめがあのダンジョンに付加したのは明晰夢の複合か」
「奏良よ、吉乃信也の明晰夢の力と吉乃かなめの明晰夢の力を改めて、見極める必要がありそうだな」
「そうですね。ダンジョンを無理やり構築させる明晰夢の複合の力は計り知れません」
奏良の言葉に、有とプラネットは同意する。
「徹くん、今の『サンクチュアリの天空牢』のダンジョンの様子はどうなのかな?」
「まだ、詳しいことは分からない。ダンジョン全域の索敵は明日、行うことになっているからな」
花音が声高に疑問を口にすると、徹はイリスからの情報を確認しながら応える。
「なら、改めて、『サンクチュアリの天空牢』の情報を確認しなくてはならないな」
『アルティメット・ハーヴェスト』のメンバーの一人が提示した資料を散見していた有は、意味ありげに表情を緩ませた。
信也とかなめが明晰夢の力を用いて構築したダンジョンーー。
「明晰夢の複合で構築されたダンジョンか」
「明晰夢の複合で構築されたダンジョンね」
望とリノアが示した事実に、花音は改めて自分が為すべきことを触発される。
「ねえ、望くん、リノアちゃん」
「「……花音?」」
花音の呼びかけに、望とリノアは首を傾げる。
居ても立ってもいられなくなったのか、花音は攻撃する際の身振り手振りを加えながら飛び跳ねた。
「私達のスキルも複合できるのかな? もし、できるのなら、私の天賦のスキルとお兄ちゃんのアイテム生成のスキルで望くんとリノアちゃんの武器を強化してみせるよ!」
「……花音。強化できるのなら既にしている。複合スキルによる武器の強化は簡単にできるものではないみたいだ」
花音が自信満々で告げると、奏良は呆れたように有に目配りする。
「妹よ。残念だが、奏良の言うとおり、複合スキルによる武器の強化は容易にできるものではないようだ。そもそも、俺達のスキルを合わせるのは至難の技だぞ」
「……そ、そうなんだね」
自身のアイデンティティーを否定されて、花音は落胆する。
「だが、確かに複合スキルによる武器の強化は魅力的に感じてしまうな。今は無理でも、正確に息を合わせることができたら可能かもしれないな」
「お兄ちゃん。『星詠みの剣』はアイテム生成のスキルと天賦のスキルを使って無理やり強化させたんだよね」
「その通りだ、妹よ」
喜び勇んだ妹の意を汲むように、有は自身の考えを纏めた。
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