『レギオン』と『カーラ』がこれ以上、仮想世界と現実世界を巻き込む前に終わらせる。
その信念を実行に移すべく、望達はそれぞれの武器に手をかけた。
物量戦で攻め来るのか。
それとも、強力なモンスターを使役して、望達を脅かしてくるのか。
周囲を窺う望達に緊張が走る。
「それに、妹よ。リノアの意識を取り戻すための方法の模索が難航しているようだからな。あの時、手嶋賢は確かに今、リノアの意識が戻ったらまずいと言った。つまり、リノアの意識が戻れば、打つ手があるということだ」
「そうなんだね……。リノアちゃんの意識が戻ったら、いっぱいお話したいな」
有の説明に、花音は声高に想いを口にする。
「奏良くん。愛梨ちゃん、大丈夫かな?」
「ああ、愛梨は大丈夫だと思う。椎音紘の特殊スキルによって護られているからな」
「そうだね」
奏良の確信に近い推察に、花音は穏やかな表情で胸を撫で下ろす。
「相変わらず、この街にいるプレイヤーが僕達だけというのはいささか複雑な心境だな」
「うん。いつでも私達、ギルドの貸し切りみたいだね」
奏良の懸念に、花音は人懐っこそうな笑みを浮かべて答える。
やがて、右手をかざした花音は爛々とした瞳で周囲を見渡し始めた。
「でも、奏良くん。昨日、愛梨ちゃん達を狙ってきたように、『レギオン』と『カーラ』の人達がまた何処かに隠れているかもしれないよ!」
「花音、ありがとうな」
両手を握りしめて語る花音に熱い心意気を感じて、望は少し照れたように頬を撫でてみせた。
「やあ」
「有、花音、それに望くん」
「父さん、母さん!」
「お父さん、お母さん、お待たせ!」
「こんにちは」
望達がギルドに入ると、既に有の両親が控えていた。
アンティークな雑貨の数々と、有の母親の火の魔術のスキルで光らせている灯は、ギルド内に幻想的な雰囲気を醸し出している。
望が視線を巡らせていると、リノアの事を任せていたプラネットが切り出した。
「マスター、おはようございます。リノア様が目覚めました」
「おはよう、プラネット。そうなんだな」
その報告に、望は安堵の表情を浮かべる。
「プラネットよ。恐らく、望がログインしたことで、リノアもまた、連動したように目覚めたのだろう」
「わーい、プラネットちゃん!」
花音が喜び勇んでプラネットにリノアの状況を聞いていたのも束の間、有は今後のことを改めて思案した。
「プラネットよ、『アルティメット・ハーヴェスト』の連絡は来ていないのだな?」
「はい、徹様からのご連絡は来ていません」
有の的確な疑問に、プラネットは訥々と答える。
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