「なっ!」
鋭く声を飛ばした望は、森の奥から次々と現れるプレイヤー達の存在に気づいた。
全員が騎士の如き装備を身に纏い、それぞれの武器を望達に突きつけてくる。
ニコットを先頭に並んでいることから、恐らく、全員が『レギオン』の一員なのだろう。
相手は、騎士団に等しい。
それらを相手に戦い、この森から脱出するのは骨が折れるだろう。
しかし、敵はそれだけではなかった。
「蜜風望、いい加減、諦めろ! 『レギオン』は、特殊スキルの力を世界の安寧のために使うだけだ!」
さらに、森の奥から『レギオン』に勝るとも劣らない大人数のプレイヤー達が現れた。
全員が白いフードを身につけ、それぞれの武器を望達に突きつけてくる。
「『カーラ』」
ニコットが淡々と口にする。
高位ギルドのひとつの名前を。
「どうして、『レギオン』と『カーラ』が協力し合っているんだ?」
電磁波の支配から解放された望は目を丸くし、驚きの表情を浮かべる。
「まさか、高位ギルド同士が手を結んだのか?」
「それは違う」
奏良の驚愕を、ニコットは首を横に振って否定した。
「『カーラ』は元々、『レギオン』の傘下」
その想定外の発言に、有の思考に確かな疑念がよぎる。
「つまり、ニコットよ。『カーラ』は、『レギオン』の一部だったというわけだな」
「そう思ってもらっていい」
有が転送アイテムを使うタイミングを見計らっていると、数本のダガーを構えたニコットは肯定する。
望達も遅れて、それぞれの武器を構えた。
高位ギルドが、上位ギルドを傘下に置いている。
決して、前例がないわけではない。
『カーラ』は元々、公式リニューアル前までは上位ギルドだったからだ。
「活路を見出(みいだ)せないな」
望は剣を鞘から抜いたが、包囲の一角を切り崩す術は見つからない。
「マスター。さらに、上空から複数の生命体が出現するのを感知しました」
「『カーラ』が、新たに喚んだ飛行系の召喚獣か。空を飛んで、ここから逃げるのは不可能だな」
プラネットの警告に、奏良は不満そうに空から視線を逸らした。
「お兄ちゃん、これからどうしたらーー」
予想外の出来事を前にして、花音が疑問を口にしようとした瞬間ーー
「……何もしなくていいぞ」
響き渡ったその声に、望達は大きく目を見開いた。
「心配するな、妹よ。打開策は考えている」
「さすが、お兄ちゃん!」
誇らしげにそう言い放った有を見て、花音は顔を輝かせる。
望達とニコット達による、隠しようもない戦意と敵意。
一触即発の空気はーー
「鶫原徹、そして『アルティメット・ハーヴェスト』の者達よ! 望を監視しているのだろう?」
森の奥へと声をかけた有によって、一瞬にして霧散した。
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