「「はあっ!」」
交戦していた『レギオン』のギルドメンバー達を打ち払い、望とリノアが有達の前に突出する。
攻防一体の突進で、進路を確保していくつもりだった。
「おのれ!」
「慌てる必要はない」
凛とした声が、混乱の極致に陥っていた『レギオン』のギルドメンバー達を制する。
「賢様」
「虚を突かれたのは意外だったが、美羅様の真なる力の発動の真意については伝えることはできた。このまま、予定どおりに事を進めていけばいい」
『アルティメット・ハーヴェスト』の者達と対峙していた賢のつぶやきが、不気味に木霊した。
「蜜風望達は、美羅様と同化した久遠リノアをこのままにはしておけないだろう。たとえ、病院で精密検査を受けたとしても、元には戻らないからな。必ず、『創世のアクリア』のプロトタイプ版の世界で、彼女を元に戻す方法を探すはずだ」
長い沈黙を挟んだ後で、賢は淡々と告げる。
「久遠リノアを元に戻す方法。それは他ならず、美羅様の真なる力の発動しかない。蜜風望達の側にいれば、私達の求めている美羅様の真なる力の発動はいずれ実現するはずだ。そうなれば、『レギオン』と『カーラ』は世界を救った救世主だとして称えられ、全ての事柄は美羅様のーー私達の思いのままになる」
「はっ。心得ています」
賢は、美羅の腹心。
彼の行動は、美羅の意向に基づいている。
嗜虐的な賢の指示に、『レギオン』のギルドメンバー達は丁重に一礼した。
「後は、この先で転送アイテムか、転送石を使うだけか」
「手嶋賢様、了解しました」
徹が決意するように後ろを振り返ったその瞬間、不可解な電子音のやり取りが聞こえてくる。
「『アルティメット・ハーヴェスト』の参戦により、戦況は混戦状態に突入しました。ではでは、ニコットは予定を変更して、その作戦を決行します」
「作戦……?」
無邪気に嗤うニコットの発言を聞いて、徹は嫌な予感がした。
不意に、紘から聞かされていた言葉が脳裏をよぎる。
紘が予め、言っていたとおり、『レギオン』側に何かしらの動きがあったみたいだなーー。
しかし、徹の思惑には気づかずに、ニコットは淡々と一方的な会話を続ける。
「はい。契約に従い、優先的に蜜風望達、『キャスケット』と交戦します」
「ニコット。そこのモンスター達の一掃を頼む!」
「了解しました」
ニコットは通信を切ると、『レギオン』のギルドメンバー達の指示に従い、現れたモンスター達に向かって数本のダガーを投げる。
ダガーの襲来を受けて、彼らに襲いかかろうとしていたモンスター達は怯んだ。
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