「望達が罠を解除するまで、何とか足止めしないとな。行け!」
徹は確固たる決意とともに光龍を使役する。
光龍は身体を捻らせてかなめへと迫った。
「ーーっ」
かなめは光の魔術を用いて、その一撃を防ぐ。
だが、すぐに新たな第二撃が迫っていた。
「……次撃は『アルティメット・ハーヴェスト』が誇るNPCですか」
かなめが投げかけた言葉に答えることもないまま、イリスは槍を上下反転させると、すぐさま振り上げの第二撃を放つ。
初速でいえばニコットには劣るその速度、しかしイリスの攻撃の神髄は此処から始まる。
かなめがそれを受けると、すぐさま光龍の猛攻に攻められる。
無数の甲高い衝突音と重い衝撃。
光龍、そして上空を旋回するイリスの手は止まらない。
一瞬でいて、永遠のような交わり、その交錯は一向に止まらない。
徹達は緻密な連携と速度で四方八方から攻勢をかけ続けた。
対するかなめは防戦一方になる。
「……さすがに手強いですね。鶫原徹、そして『アルティメット・ハーヴェスト』が誇るNPC」
「その割には随分と余裕ですね」
かなめの言葉に呼応するように、気迫の篭ったイリスの声が響き渡る。
「私の『明晰夢』の力は……少し特殊ですから。たとえ、あなた方にそれを防ぐ手段があっても、魔力はいずれ尽きます」
「……その余裕、必ず失わせてみせます」
柔らかい表情も、向けられる感情も、穏やかだ。
だが、どこかしら……影が、残っている。
かなめの言葉に、槍を振りかざしたイリスは不満そうに表情を歪めた。
「何とかして、ここを凌がないとな」
「何とかして、ここを凌がないとね」
「望くん、リノアちゃん。『レギオン』と『カーラ』の人達が私達をこの部屋に招き入れたのは、明晰夢の力がもっとも効果的に生じている場所だからだよね。それってつまりーー」
問いにもならないような望とリノアのつぶやきに、花音は人懐っこそうな笑みを浮かべて言った。
「望くんと愛梨ちゃんの特殊スキルの力なら、『あの時』のように道を切り開くことができるかもしれないね」
「そうだな」
「そうだね」
思わぬ花音の答えに、望とリノアは笑みの隙間から感嘆の吐息を漏らす。
「俺達が勝つためには、この状況を打破するしかないな」
「私達が勝つためには、この状況を打破するしかないね」
「うん」
望とリノアの決意の宣言に、花音は意図して笑みを浮かべてみせた。
有達のギルド『キャスケット』。
誰かと共にあるという意識は、押されていてもなお、決して自分達が負けることはないという不屈の確信をかきたてるものだと望は感じた。
そして、眼下の戦いへと目を向ける。
そこでは、徹とイリスがかなめ達と激しい戦いを繰り広げていた。
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