救世の女神である美羅は私達の理想を叶えてくれたというのに。
望達はそれを拒もうとしている。
信也にとって安寧は素晴らしいものだ。
……それすらも解らぬ者達に未来を委ねられる訳がない。
もしも彼らが未来を手にしたとしても、それは私達が望む理想の世界とは程遠いだろう。
「蜜風望と椎音愛梨、そして椎音紘。……君達は滑稽な舞台の役者になろうとでもしているのか? それが望んだ本懐とでもいうのか?」
安寧の素晴らしさに気付かぬ者は愚かだ。気付いている上でならば更に救えぬ愚者だ。
信也はそう考えている。そう信じている。
だからこそ、望と愛梨の考えが理解できない。
そんな信也の想いとは裏腹に、有は思考を加速させていく。
「奏良よ、光龍と戦闘を繰り広げている二体の骨竜の対処を頼む」
「言われるまでもない」
有の指示に、二体の骨竜から距離を取った奏良は銃を構えた。
発砲音とともに、奏良の放った弾丸の連射が二体の骨竜へと向かう。
『グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
愛梨の特殊スキルが込められた弾は二体の骨竜を貫通する。
その弾は彗星の如く、虹を纏う光芒と化す。
絶え間なく弾丸が放たれるその光景は、まさに流星群のような輝きを見せる。
なかなか減らなかった骨竜のHPが目に見えて減っていく。
「行け!」
体勢を崩した二体の骨竜目掛けて、徹はここぞとばかりに光龍を使役する。
光龍は身体を捻らせて二体の骨竜へと迫った。
『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
虚を突かれたせいなのか、二体の骨竜は体勢を立て直すこともできずにまともにその一撃を喰らう。
「この弾は相変わらず……すごいな!」
奏良はさらに二体の骨竜に向かって、さらに何発もの銃弾を放つ。
『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
奏良が放つ流星の弾と徹が使役する光龍を前に、二体の骨竜は為す術もない。
やがて、二体の骨竜は閃光に塗り潰されて、断末魔を上げながらこの世界から消えていった。
「馬鹿な、あの骨竜をこうもあっさり葬るだと!」
想定外の出来事に、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達が不可解な顔を浮かべる。
「おのれ!」
「慌てる必要はない」
凛とした声が、混乱の極致に陥っていた『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達を制した。
「信也様!」
「椎音愛梨の特殊スキル、確かに厄介すぎるが、この状況は私達が待ち望んでいた光景でもある」
迫り来る紘の猛攻を躱しつつ、信也はこの状況を打破するために思考を深める。
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