「だから、頼む! リノアの意識を取り戻す方法を教えてくれないか!」
「……意識」
思いの丈をぶつけられた美羅の残滓は、その全てを正面から受け止める。
「……でしたら、まずは私を消滅させる必要があります」
「消滅……?」
「久遠リノアの意識の覚醒の妨げになっているのは、美羅そのもの。その中には、私も含まれています」
そう答えた美羅の残滓に、望達は明確に怯んだ反応をした。
「消滅……? それってつまり、彼女は機械都市『グランティア』に赴くための鍵でもあり、リノアの意識を覚醒させるための鍵でもあるのか?」
「消滅……? それってつまり、彼女は機械都市『グランティア』に赴くための鍵でもあり、私の意識を覚醒させるための鍵でもあるの?」
美羅の残滓から自身の存在意義を聞き、望とリノアは痛ましげな表情を見せた。
つまり、目の前の少女はリノアに宿っている美羅の『ゲーム用のモデル』ーーNPCであり、理想の世界を元に戻すための鍵ということになる。
それはリノアの意識を覚醒させるためには、彼女を消滅させる必要があるということだ。
「「それは……!」」
望とリノアは弾かれたように声を上げていた。
思わぬ事実に、動悸が激しくなる。
「躊躇う必要はありません。私は吉乃美羅のデータの固まりにすぎません。本物の吉乃美羅ではありません」
断定する形で結んだ美羅の残滓の言葉に重なるように。
有は複雑な心境で自身の考えを纏める。
「つまり、美羅を消滅させるためには、リノアの意識を覚醒させて、データの集合体に戻した上で倒す必要があるということか」
『創世のアクリア』の世界の真実に纏わる話。
有は一息つくと、事態の重さを噛みしめる。
「まずは彼女を介して、早速、機械都市『グランティア』に赴く必要があるな」
「有。君は人使いが荒い上に、全く効率的ではない。そもそも、今は戦闘を終えたばかりだ。
機械都市『グランティア』に赴いた瞬間、返り討ちに遭うのが目に見えている」
有の提案に、奏良は懐疑的である。
だが、それでもこの状況を打破するためには、それしかないと奏良は悟った。
「機械都市『グランティア』は敵の本拠地だ。入念に準備してから乗り込むべきだ」
「いよいよ、最終決戦なんだね」
赤みがかかった髪を揺らした花音が顔を俯かせて声を震わせる。
すると、望とリノアはそんな彼女の気持ちを汲み取ったのか、頬を撫でながら照れくさそうにぽつりとつぶやいた。
「花音。大丈夫だからな」
「花音。大丈夫だから」
「……うん。望くん、リノアちゃん、ありがとう」
顔を上げた花音は胸のつかえが取れたように微笑む。
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