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留菜マナ
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第ニ百六十五話 唯一無二の想い⑤

公開日時: 2021年6月10日(木) 16:30
文字数:1,480

「ララ、『レギオン』のギルドメンバー達の動きを止めろ!」

「了解!」


金色の光を身に纏った人型の精霊。

妖精達とさほど変わらない体躯の精霊ララは、主である徹の指示に従ってふわりと飛来する。


「ここは通さないわよ!」

「なっ!?」

「また、精霊が邪魔してきたのか!」


ララは浮遊したまま、『レギオン』のギルドメンバー達の行く手を塞いだ。


「邪魔をするな!」


その時、様々な武器による『レギオン』のギルドメンバー達の猛攻が襲いかかる。


「そんな攻撃、意味ないわよ」


だが、それが放たれるよりも先に、ララは電光石火の早業で光の檻を生成させた。

彼らの逃げ道を塞ぐように、四方形の光の壁が具現化する。


「何だ?」

「なにこれ! 出られない!」

「これで、あなた達はここから逃げられないわよ」


『レギオン』のギルドメンバー達の叫びをよそに、ララが得意げに腰に手を当てる。

そのまま、ララは飛来して、徹の前で喜び勇んだ。


「徹。あたし、頑張ったよ。誉めて誉めてー」

「ララ、ありがとうな」

「えへへ……」


徹の称賛に、ララは嬉しそうに赤らんだ頬にそっと指先を寄せる。

そして、徹が動くのを見計らっていたように、イリスもまた、次々と『レギオン』のギルドメンバー達の攻撃を振り払う。


「ここから先には行かせないよ!」


花音が間合いを詰め、眼前の『レギオン』のギルドメンバー達を打ち倒した。

だが、打ち漏らした敵が、次々と花音に襲い掛かってくる。

攻撃魔術の衝撃を受けながら、花音は一歩も退かずに鞭を叩き込んでいく。

だが、すぐに状況を思い出して、花音は不安を吐露する。


「お兄ちゃん、あの子を元に戻すことはできないかな……」

「妹よ、手嶋賢の真意が分からない以上、あの提案には乗るわけにはいかない。現状、あのモンスターを元に戻すことは厳しそうだ」


花音の悲痛な思いを汲み取るように、有は訥々と語った。

有の視線の先では、ニコットが賢達の後を追い、乱戦の渦中に飛び込んでいく姿が見受けられる。

ニコットの指示に従っていたスライムタイプのモンスターは、彼女がダンジョンから離れたことで消えていた。

同様に、『レギオン』のギルドメンバー達が呼び出した使い魔達も胡散霧散している。


「よし、望、リノア、奏良、プラネット、勇太、そして妹よ、『アルティメット・ハーヴェスト』の者達と協力しながら、この地を離れるぞ! 転送アイテムか、転送石を使用する必要があるからな!」

「ああ」

「うん!」


有の号令の下、望達は湖畔の街、マスカットを目指して疾駆する。

だが、それでも追いかけてくる『レギオン』のギルドメンバー達の数は一向に減らない。


「喰らえ!」


戦局全体を見極めていた奏良は、銃を構えると範囲射撃をおこなう。


「ーーっ」


不意を突いた連続射撃は、追撃に出ようとした『レギオン』のギルドメンバー達を怯ませる。

しかし、一部の者達はそれを避けると、奏良にそれぞれの武器を振りかざしてきた。


「なら、これでどうだ! 『エアリアル・ライカ!』」


奏良は、『朽ち果てた黄昏の塔、パラディアム』で覚えたスキルを披露する。

奏良が放った無数の風の渦が、高速光線となって、縦横無尽に軌跡を描く。

予測できないランダム軌道の疾風に、『レギオン』のギルドメンバー達は虚を突かれた。


「よし、今のうちに行くぞ!」


奏良が渾身の力を込めた、風の魔術のスキル。

それは勝機へと繋がる。

有達は、混乱する『レギオン』のギルドメンバー達の只中を駆け抜けていった。


「プラネットちゃん、私達も行くよ!」

「はい」


先行する望達を追いかけて、花音とプラネットは並走して、苛烈な連携攻撃を『レギオン』のギルドメンバー達に加えていった。

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