『星詠みの剣』。
それはカリリア遺跡のクエストの報酬の目玉の一つであった、光の魔術の付与効果がある伝説の剣だ。
手嶋賢が所有するその剣は水の魔力、そして望と愛梨の特殊スキルが込められた蒼の剣に対抗する力を備わった伝説の武器。
複合スキルによって強化された『星詠みの剣』は、まさに伝説の武器に相応しい力を発揮していた。
「望くんと愛梨ちゃんの特殊スキルは合わせることができたんだよね。望くんの魂を愛梨ちゃんに分け与えているからなのかな」
「妹よ、そうかもしれないな」
花音の発意に、有は顎に手を当ててその方向性を見定める。
「有、『サンクチュアリの天空牢』のダンジョンにはいつ行くんだ?」
「有、『サンクチュアリの天空牢』のダンジョンにはいつ行くの?」
「望、リノアよ、ダンジョン全域の索敵が終わり次第、向かうつもりだ」
望とリノアの疑問に、インターフェースを操作していた有は訥々と答えた。
「索敵が終わり次第か。それまでの間、あの部屋に行く手段を練ってみるか」
「索敵が終わり次第。それまでの間、あの部屋に行く手段を練ってみるね」
「まあ、その方が確実だろうな」
後日赴く真意に触れて、望とリノア、そして奏良は納得したように頷いてみせる。
「明晰夢の複合で構築されたダンジョンか。もしかしたらプロトタイプ版しかないダンジョンは、同じように彼らによって構築されたものかもしれないな」
「奏良よ、その可能性は大いにあるな」
奏良が具体的な疑問を口にすると、有は思考を深めた。
「ねえ、あの部屋に行く手段ってどんな方法があるのかな?」
「僕は転送系統のスキルか、アイテムなどを用いた可能性が高いと睨んでいる」
花音が掲げた懸念材料に、奏良は自身の推測を口にする。
「転送系統か。せめて、部屋がある範囲を絞れたらいいんだけどな」
「転送系統。せめて、部屋がある範囲を絞れたらいいんだけどね」
望とリノアが関わった仮想世界での出来事は、如何なる行動も現実世界に対して『可能性』を紡ぐ。
蓄積された想いは、やがて二つの世界を救う可能性にすらなるのかもしれない。
「紘の特殊スキルの力である程度の範囲までは絞れている。だけど、部屋の正確な位置までは分からない。ここまで美羅の力が紘の啓示に抗う力となってくると空恐ろしくなってくるな」
その様子を見守っていた徹は険しい表情でつぶやいた。
『創世のアクリア』のプロトタイプ版を産み出した四人の開発者ーー。
『救世の女神』を産み出すという禁忌を犯したことで始まった戦いは、仮想世界だけではなく、現実世界までも浸食していった。
漠然とした想いのまま、徹達は理想の世界へと変わった現実世界での日々を過ごしている。
しかし、特殊スキルの使い手達だけではなく、一介のプレイヤーである自分にもできることはあるはずだ。
徹は改めて、理想の世界に立ち向かう決意を固めた。
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