破滅をもたらす。
救いをもたらす。
相反するようで、彼らの中では一致している。
美羅の真なる力を解放すれば、彼らは自由になるのかもしれない。
しかし、それは望達にとっては世界に破滅をもたらすことと同義だ。
それは普段であれば、除かれる手段だろう。
だが、彼らは違った。
世界のために最愛を失うか、最愛のために世界を敵に回すか。
恐らく、『レギオン』と『カーラ』は躊躇うことなく、世界を選ぶだろう。
全ては、彼らが告げる世界の安寧のためにーー。
『エアリアル・アロー!』
奏良が唱えると、無数の風の矢が一斉に『レギオン』と『カーラ』の者達へと襲いかかった。
HPを示すゲージは少し減ったものの、青色のままだ。
「行きます!」
裂帛の咆哮とともに、プラネットは力強く地面を蹴り上げた。
「はあっ!」
気迫の篭ったプラネットの声が響き、『レギオン』と『カーラ』の者達は次々と爆せていく。
この状況下で即座に敵を倒し得る手段がないのは、『レギオン』と『カーラ』側であった。
『サンクチュアリの天空牢』側の防衛に戦力を割いていたが故に。
「椎音愛梨はこの場にはいない。蜜風望だけだ」
「報告に戻るぞ」
状況の不利を悟った『レギオン』と『カーラ』の者達が踵を返し、その場から去ろうとする。
そこに逃がさないとばかりに、勇太が立ち塞がった。
「逃がさないからな!」
「……くっ」
打ち倒すべき敵を睨み据えた勇太は床を蹴って、勇猛果敢に大剣を振りかざした。
しかし、勇太の防衛をすり抜けた者達がこの場から逃れようとする。
「お兄ちゃん、お願い!」
『元素復元、覇炎トラップ!』
花音の一声に、有は動きを阻害するために『レギオン』と『カーラ』の者達に向かって杖を振り下ろした。
有の杖が床に触れた途端、空中に炎のトラップシンボルが現れる。
彼らがそれに触れた瞬間、熱き熱波が覆い、炎に包まれた。
「これで終わりだ!」
「これで終わらせる!」
「……っ」
『レギオン』と『カーラ』の者達の動きが止まったことを確認すると、望とリノアは乾坤一擲の技を放つ。
その猛撃の前に、HPが残っていた『レギオン』と『カーラ』の者達も力尽き、瀕死の状態になる。
「俺の出番、なかったな」
そのまま『レギオン』と『カーラ』の者達を捕らえてみせた望達の姿を見て、徹は感嘆の吐息を漏らす。
その様子を傍目に、有は早々に切り出した。
「徹よ。これからどうする?」
「それに答える前に、ここからは重要な話になるからーー『我が声に従え、シルフィ!』」
徹はそこまで告げると、自身が契約している精霊を呼び出した。
主である徹の意思を汲んだように、周囲の音がぴたりと遮断される。
外に音が漏れないように、望達の周りに見えない壁を張ったのだ。
周囲の音が聞こえなくなったことを確認すると、徹は仕切り直して続けた。
「捕らえた者達の身元の判明は、『アルティメット・ハーヴェスト』の方で行う。このまま、彼らに扮して、『サンクチュアリの天空牢』に向かおう」
有の疑問に答えた徹の胸に、様々な情念が去来する。
「そうだな」
「そうだね」
インターフェースで表示した時刻を確認しながら、望とリノアは顎に手を当てて、真剣な表情で思案した。
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