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留菜マナ
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第四百四十七話 君が原色に変わるまで②

公開日時: 2024年1月26日(金) 16:30
文字数:1,286

破滅をもたらす。

救いをもたらす。

相反するようで、彼らの中では一致している。

美羅の真なる力を解放すれば、彼らは自由になるのかもしれない。

しかし、それは望達にとっては世界に破滅をもたらすことと同義だ。

それは普段であれば、除かれる手段だろう。

だが、彼らは違った。


世界のために最愛を失うか、最愛のために世界を敵に回すか。


恐らく、『レギオン』と『カーラ』は躊躇うことなく、世界を選ぶだろう。

全ては、彼らが告げる世界の安寧のためにーー。


『エアリアル・アロー!』


奏良が唱えると、無数の風の矢が一斉に『レギオン』と『カーラ』の者達へと襲いかかった。

HPを示すゲージは少し減ったものの、青色のままだ。


「行きます!」


裂帛の咆哮とともに、プラネットは力強く地面を蹴り上げた。


「はあっ!」


気迫の篭ったプラネットの声が響き、『レギオン』と『カーラ』の者達は次々と爆せていく。

この状況下で即座に敵を倒し得る手段がないのは、『レギオン』と『カーラ』側であった。

『サンクチュアリの天空牢』側の防衛に戦力を割いていたが故に。


「椎音愛梨はこの場にはいない。蜜風望だけだ」

「報告に戻るぞ」


状況の不利を悟った『レギオン』と『カーラ』の者達が踵を返し、その場から去ろうとする。

そこに逃がさないとばかりに、勇太が立ち塞がった。


「逃がさないからな!」

「……くっ」


打ち倒すべき敵を睨み据えた勇太は床を蹴って、勇猛果敢に大剣を振りかざした。

しかし、勇太の防衛をすり抜けた者達がこの場から逃れようとする。


「お兄ちゃん、お願い!」

『元素復元、覇炎トラップ!』


花音の一声に、有は動きを阻害するために『レギオン』と『カーラ』の者達に向かって杖を振り下ろした。

有の杖が床に触れた途端、空中に炎のトラップシンボルが現れる。

彼らがそれに触れた瞬間、熱き熱波が覆い、炎に包まれた。


「これで終わりだ!」

「これで終わらせる!」

「……っ」


『レギオン』と『カーラ』の者達の動きが止まったことを確認すると、望とリノアは乾坤一擲の技を放つ。

その猛撃の前に、HPが残っていた『レギオン』と『カーラ』の者達も力尽き、瀕死の状態になる。


「俺の出番、なかったな」


そのまま『レギオン』と『カーラ』の者達を捕らえてみせた望達の姿を見て、徹は感嘆の吐息を漏らす。

その様子を傍目に、有は早々に切り出した。


「徹よ。これからどうする?」

「それに答える前に、ここからは重要な話になるからーー『我が声に従え、シルフィ!』」


徹はそこまで告げると、自身が契約している精霊を呼び出した。

主である徹の意思を汲んだように、周囲の音がぴたりと遮断される。

外に音が漏れないように、望達の周りに見えない壁を張ったのだ。

周囲の音が聞こえなくなったことを確認すると、徹は仕切り直して続けた。


「捕らえた者達の身元の判明は、『アルティメット・ハーヴェスト』の方で行う。このまま、彼らに扮して、『サンクチュアリの天空牢』に向かおう」


有の疑問に答えた徹の胸に、様々な情念が去来する。


「そうだな」

「そうだね」


インターフェースで表示した時刻を確認しながら、望とリノアは顎に手を当てて、真剣な表情で思案した。

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