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留菜マナ
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第四百八十三話 夏の風に揺れる⑥

公開日時: 2024年5月31日(金) 16:30
文字数:1,151

「ーーっ!」


かなめには何が起きたのか、見えなかった。

目で追える速度ではない。

もはや、それは洗練された演舞のようだった。

かなめは体勢を立て直すこともできずにまともにその一撃を喰らって吹き飛ばされた。


「まだまだ、行くぜ!」

「なっ……」


至近から呟かれた言葉に、置き土産としての追撃。

今度こそ、混乱するかなめの前で、勇太の新たな技が披露される。


『フェイタル・トリニティ!』


勇太は跳躍し、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達の不意を突くようなかたちで大技をぶちかました。

勇太の放った天賦のスキルによる波動が、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達のギルドメンバー達を襲う。


「なっーー」


視線を誘起された『カーラ』のギルドメンバーの一人が、その不慮の一撃をまともに喰らう。

その瞬間、『カーラ』のギルドメンバーの一人は体力を失い、そのまま、この仮想世界から消えていった。

光を纏った大剣が、周囲にいた『カーラ』のギルドメンバー達さえも攻撃ごと吹き飛ばす。


「よし、今のうちに俺達も上部に向かおう!」


それは絶好の好機だった。

徹は混乱する『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達の只中を駆け抜ける。


「望達に手を出させないからな!」


徹がそう叫ぶと、光龍はそれに応えるように重い唸りを上げて『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達に襲いかかった。

一筋の閃光が空間を切り裂いて、彼らを大きく吹き飛ばす。

徹が行使する光龍は、身体を捻らせてかなめへと迫った。

だがーー。


「ーーっ」


だが、別のモンスターの群れが不意を突いて包囲してきたことで、光龍は動きを阻まれる。


「徹様!」


イリスはすかさず徹の加勢に向かう。

躍動する闇と槍の光が入り乱れる戦場を、イリスは凄まじい速度で上空から駆ける。

彼女の繰り出す斬撃は早く鋭く、光龍を包囲しているモンスター達を切り裂いていく。

その隙に、望とリノアの後を追っていた花音達は最上部にたどり着く。


「よし。妹よ、これで罠はないはずだ。天井の先ーー最上部へと向かうぞ!」

「うん!」


有の指示に、花音が勇ましく点頭する。

最上部の更なる上へと赴いた望達は天井裏のフロアへと着地した。


「この部屋の秘密を解くための鍵。どこにあるのかな?」


右手をかざした花音は、嬉々とした瞳で最上部のフロアを見回した。

そこにいたのはーー


「見て。いつかこの蒼い花は光になるんだもの」


青い花弁がフロアに舞い上がる。

仄かに輪郭を染める花弁はゆっくりと回転しながら降り注いだ。

望達が視線を向ければ、そこには一面に広がる青い花。

優しく光るその花は幻想的で、まるで夢を見ているよう。


「どんな蕾でも、いつかは花開くの。だから、前を向いて」


まるで幼子のように微笑んだ笑顔は甘やかな色彩に彩られる。

愛梨に似た少女の柔らかな頬が桃色に色づいていた。

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