一番怪しいのはニコットだ。
プラネットは精神統一して、電磁波の発信源の特定をしようとする。
「電磁波、防ぐの」
「……シルフィ様!」
その瞬間、シルフィは弾かれたように姿を見せた。
矢面(やおもて)に立った彼女が、咄嗟に電波を遮断する。
「ーーっ」
だが、その直後、望の背筋に突き刺すような悪寒が走った。
「頭が痛い……」
賢の誘いを断っていた望が、不意に苦しそうに頭を押さえる。
「望!」
「望くん!」
「望!」
「マスター!」
望のただならぬ様子に、有達は悲痛な声を上げた。
「ーーっ」
「の、望くん、大丈夫? 顔色悪いよ?」
頭を押さえる望を見て、花音は不安そうに顔を青ざめる。
「お兄ちゃん。望くん、大丈夫かな?」
「リノアから美羅を解放させたことによって、望は再び、シンクロの影響を受けるようになったのかもしれないな」
花音の戸惑いに、有は思案するように視線を巡らせた。
その時、一筋の殺気が放たれた。
「そこです!」
しかし、その不意討ちは、プラネットには見切られていた。
プラネットは反射的に飛んできたアルビノの鞭を避けると、その方向に向かって電磁波を飛ばした。
「ーーっ」
初擊の鋭さから一転してもたついたニコットは、電磁波の一撃をまともに喰らい、苦悶の表情を浮かべる。
「喰らえ!」
そこに、奏良の銃弾が放たれた。
弾は寸分違わず、ニコットに命中する。
「敵意確認。指令を妨害されたことにより、再び臨戦態勢に入ります」
「ニコットちゃん!」
急速に反転する攻防を前にして、花音は大きく目を見開いた。
「ーーっ」
その直後、望の背筋に再び、突き刺すような悪寒が走った。
「また、電磁波。シルフィ様が電磁波を防いでいるのに、どうして?」
周囲を窺っていたプラネットは、望の様子を見て痛々しく表情を歪ませる。
「ニコットは、究極のスキルを促すために作られました。美羅様を宿している今のニコットのシンクロを止めることはできません」
「そんな……」
思わぬ事実を前にして、プラネットは絶句した。
「究極のスキルを促すために作られた。まさか、彼女が究極のスキルそのものなのか?」
「それは違う」
奏良の驚愕を、ニコットは首を横に振って否定した。
「美羅様が、人智を超えた成長を遂げる『究極のスキル』そのもの。ニコットはそれを補う存在」
その想定外の発言に、有の思考に確かな疑念がよぎる。
「つまり、ニコットよ。『究極のスキル』そのものである美羅を宿している状態。強化されている状態だから、シンクロを止めることはできないというわけだな」
「そう思ってもらっていい」
有が状況を見計らっていると、アルビノの鞭を構えたニコットは肯定する。
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