愛梨は必死に言葉を形にするように掠れた声で続ける。
「私がずっと怯えていたら……望くん達に申し訳ないから」
愛梨がなけなしの勇気を振り絞っているのはどう見ても明らかだった。
その声音は弱々しくあまりにも脆い。
「そうだな。何かあったら、すぐに携帯端末で知らせろよ。すぐに駆けつけるからな」
「……ありがとう」
徹の気遣いに、愛梨は花が綻ぶように無垢な笑顔を浮かべた。
「大丈夫だ。愛梨のことは、先生やクラスメイト達に『絶対に守り抜くように頼んでいる』」
「……うん」
紘が発した未来を見据えた意見に、愛梨は小さく頷いた。
その頃、高校に通学途中だった奏良の携帯端末に一通のメッセージが届いていた。
『奏良よ。『アルティメット・ハーヴェスト』から救援要請が入った。こちらでも『レギオン』と『カーラ』が愛梨に接触してくることがないように努めるつもりだ。愛梨を護るために意見を聞きたい』
内容は先程、紘が語っていた『レギオン』と『カーラ』についてのことだった。
有からの救援要請に関する連絡に、奏良は神妙な表情を浮かべる。
『そうだな。愛梨は美羅の真なる覚醒のための重要な要だ。それに吉乃信也と吉乃かなめは現実世界では自由に動ける。彼らの警戒もしていた方がいいと思う』
有から救援要請の顛末を聞き、奏良は痛ましげな表情を見せた。
『有。僕達が機械都市『グランティア』に行く手段を得たことで、現実世界でも『レギオン』と『カーラ』の動きが活発化しているかもしれないな』
『奏良よ、恐らくはそうだろう』
メッセージのやり取りを終えた後、奏良は改めて愛梨が通っている中学校の方へと目を向ける。
今日からしばらくの間、『レギオン』と『カーラ』の者達が愛梨に接触してくる可能性が高いということで、『アルティメット・ハーヴェスト』の者達が彼女の周囲の警戒に当たっていた。
「僕達が愛梨を護衛することになるのは基本、休日のみか」
有達が通っている高校や中学校はここから離れている。
近くの高校に通っている奏良とは違い、すぐに愛梨のもとに駆けつけることはできない。
救援要請が入った『キャスケット』は、休日に
辺りの警戒に当たる形にしている。
平日に何かあった場合は、奏良が『キャスケット』の代表として駆けつけることになっていた。
「まさか、また、平日に愛梨を狙ってくるつもりじゃないだろうな」
確証はない。
だが、こういう時の嫌な予感は当たるものだ。
暗澹たる思いでため息を吐いた奏良は、有にメッセージを送る。
そして、自身の高校へと足を向けた。
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