「この場を乗り切るために、まずはモンスターを倒すしかないな」
「この場を乗り切るために、まずはモンスターを倒すしかないね」
裂帛の気迫とともに、望とリノアが力強く地面を蹴り上げた。
しかし、それを阻害するように、賢が立ち塞がる。
「くっ……!」
「……っ!」
剣を翻した望とリノアは、一定の距離を保って賢と対峙する。
高度で複雑な剣閃の応酬。
だが、それはリノアの座標をずらされることで、賢には届かない。
「リノア、任せろ!」
床を蹴った勇太は躊躇し、逡巡する望とリノアの横をすり抜ける。
起死回生の気合を込めて、賢に天賦のスキルの技を発動させた。
『フェイタル・ドライブ!』
勇太が大きく大剣を振りかぶり、光の刃が波動のように賢へと襲いかかった。
万雷にも似た轟音が響き渡る。
「ーーっ」
迷いのない一閃とともに、勇太の強烈な一撃を受けて、賢は怯んだ。
賢のHPが一気に減少する。
頭に浮かぶ青色のゲージは、半分まで減少していた。
勇太は畳み掛けるように、賢の間合いへと接近する。
「『星詠みの剣』!」
だが、賢が剣を掲げた瞬間、賢の周りに淡い光が纏う。
その瞬間、賢のHPゲージは、あっという間に半分から全快の青色に戻っていた。
「なっ!」
起死回生を込めた技を覆されて、勇太は虚を突かれたように呆然とする。
『星詠みの剣』の光の魔術の付与効果。
それは『完全回復』だった。
「また、完全回復か……」
「ああ」
驚愕する勇太を尻目に、賢は一呼吸置いてから付け加えた。
「つまり、君が私を倒すためには、一撃必殺の攻撃を放って、私を戦闘不能にするしかないということだ。だが、今の君にはその力はないはずだ」
「一撃……」
賢の表情を見て、勇太は察してしまった。
一撃必殺を決めるためには、圧倒的な強さが必要になる。
賢の指摘どおり、今の勇太にはそのような力はない。
たとえ、『サンクチュアリの天空牢』で新たに覚えた『フェイタル・トリニティ』を使っても、仲間ともに総攻撃をしても、賢を一撃で倒すことは困難だろう。
『アーク・ライト!』
「……っ! おじさん!」
その時、後方に控えていたリノアの父親は光の魔術を使って、勇太の体力を回復させる。
『お願い、ジズ! 賢様達の動きを止めて!』
それと同時にリノアの母親も、自身の召喚のスキルで小さな精霊を呼び出し、賢達の動きを制限しようとした。
しかし、それはあっさりと賢によって弾き返されてしまう。
「せめて、リノアの移動を阻止出来ればいいんだけどな」
勇太は、自分が相対している賢の実力を改めて実感する。
一方の賢も望達を見ながら深呼吸した。
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