その頃、有達はギルドホームの奥の一室で話し合いの場を設けていた。
信也は捕縛された身の上になっても決して口を割らない。その上、残りのクエストの件の話し合いも難航していた。
そんな中、ギルドホーム内を巡っていた花音達は部屋に入る。
「有!」
「お兄ちゃん、ただいま!」
「望よ、もとに戻ったのか?」
「マスター!」
望と花音の姿を見て、有とプラネットは明確な異変を目の当たりにする。
望達が席につくと、改めて今後の話し合いが開始された。
「有様。本当に手嶋賢様と吉乃かなめ様は現実世界にいるのでしょうか?」
「吉乃信也が語ったとおり、現実世界にいるとは思うが、実際はどうなのかは分からないな。まずは機械都市『グランティア』に赴くことを可能にする必要がある」
プラネットの懸念に、有はこれからの方向性を定めた。
その話を聞いて居ても立ってもいられなくなったのか、花音が攻撃する際の身振り手振りを加えながら飛び跳ねる。
「お兄ちゃん、機械都市『グランティア』って今、どうなっているのかな? 何らかの情報を確認できないかな?」
「花音、先程、調べたが、機械都市『グランティア』の情報は非公開になっているみたいだ。僕達が吉乃信也を捕らえたことを受けて、敢えて情報を非公開にした可能性がある」
花音が自信満々で告げると、奏良は怪訝そうに有に目配りする。
有はそれに応えるように、インターフェースを操作して、機械都市『グランティア』を表示させようとした。
しかしーー
『表示できませんでした』
有が何度、操作しても、エラー表示が出て情報を見ることができない。
「妹よ。残念だが、奏良の言うとおり、機械都市『グランティア』の情報は全て非公開にされている」
「……そ、そうなんだね」
自身のアイデンティティーを否定されて、花音は落胆した。
機械都市『グランティア』の情報が全て非公開になっている。
その事実は一瞬にして周囲の空気を硬化させた。
「ねえ、お兄ちゃん。吉乃信也さんは機械都市『グランティア』の情報が非公開になっていることに気づいているのかな?」
それぞれが新たな戦いに向けて意識を高める中、花音は具体的な質問を口にする。
『賢とかなめなら、恐らくは現実世界にいる。『私は一毅の願いを叶えるために、『明晰夢』の力を使って、密風望と椎音愛梨を捕らえる。賢とかなめはその間、美羅の真なる力を目覚めさせる手段を進めてほしい』とニコットに言付けを頼んでいたからな』
花音は先程の連綿と続く攻防の最中、信也が語っていた言葉を思い出したからだ。
「このタイミングで非公開にしてきたということは予め、吉乃信也がそう指示していた可能性がある」
有の言葉に反応して、プラネットがとらえどころのない空気を固形化させる疑問を口にした。
「有様。電磁波の発信は戦いの後も確認されません」
「プラネットよ。ニコットは恐らく機械都市『グランティア』にいるのだろう」
プラネットの思慮に、有は複雑そうな表情で視線を落とすと熟考するように口を閉じた。
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