「蜜風望。あなたなら、この意味が分かりますね?」
「「ーーっ」」
あまりにも単刀直入な疑問に、望とリノアは言葉に詰まる。
かなめの明晰夢の力。
それは『カーラ』のギルドホームの出来事を想起させた。
「「理想の世界……」」
望とリノアは辛辣そうに表情を歪めた。
あの時、見た明晰夢の内容は、今も鮮やかに望の記憶に焼きついている。
美羅の特殊スキルによって、かなめが見せた明晰夢の世界へと訪れたこと。
そこで、有達から語られた理想の世界の真実。
そして、紘が告げた、今後あり得るかもしれない未来の分岐点の一つだという事実。
どれもあまりに突然過ぎて、現実感がまるでなかったことを覚えている。
『吉乃信也達が持っている明晰夢の力は、本来の明晰夢とは異なる力だ。彼らが見ている明晰夢を、現実で起きていることだと錯覚させ、世界の状況を一時的に彼らの思いどおりに変化させられる力だ』
『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドホームで、紘が発した言葉が望の脳裏に蘇る。
『サンクチュアリの天空牢』は、明晰夢の複合で構築された中級者用ダンジョンーー。
それはーー信也とかなめの明晰夢の力で無理やり構築された異質なダンジョンということだ。
吉乃信也と吉乃かなめが見ている明晰夢か。
そこで望は『カーラ』のギルドホームでかなめに見せられた理想の世界を思い出す。
「『サンクチュアリの天空牢』のダンジョンを明晰夢の力を用いて生成した。それってつまり、このダンジョンには吉乃信也と吉乃かなめの明晰夢の力が常に生じているということか」
「『サンクチュアリの天空牢』のダンジョンを明晰夢の力を用いて生成した。それってつまり、このダンジョンには吉乃信也と吉乃かなめの明晰夢の力が常に生じているということね」
「なるほどな。俺達をこの部屋に招き入れたのは、明晰夢の力がもっとも効果的に生じている場所だからかもしれない。この部屋が最初に明晰夢で複合された起点の場所だった可能性が高いな」
徹はそう前置きして、かなめがこれから行おうとしていることを推測した。
「吉乃かなめは以前、望を光の魔術によるシンクロで自身の明晰夢の世界へと招き入れた。恐らく今度は、俺達ごと、美羅が完全に覚醒した理想の世界へと呑み込もうとしているのかもしれないな」
「「なっ!」」
確信を持ってその可能性を受け入れている徹の静かな声が、望達にとって受け入れがたい事実を突きつけてくる。
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