「おじさん、おばさん!」
勇太はリノアの両親に視線を向ける。
リノアの両親は今も、救世の女神である美羅ーーリノアを一目見ようとする訪問者達を必死に引き留めていた。
勇太はぐっと涙を拭うと、真剣な眼差しで訴える。
「仮想世界の方も、絶対にリノアを救い出そうな!」
「ああ。必ず、リノアを救ってみせる」
「ええ。勇太くん、ありがとう」
勇太の意気込みに、リノアの両親は決意を込めて応える。
そして、リノアの病室に詰めかける人々を必死に引き留めていった。
勇太達が、『レギオン』と『カーラ』によって管理されていた病院からリノアを救い出した頃。
通学路では、愛梨を巡る戦いが激しさを増していた。
「愛梨、無理はするなよな。俺達が絶対に守ってみせるからな」
「……うん」
徹の配慮に、愛梨は小さく頷いた。
心細そうな愛梨のもとまで歩み寄ると、紘は優しく微笑んだ。
「愛梨、大丈夫だ。久遠リノアも先程、無事に病院から脱出できたという報告がきた。後は彼らの対処だけだ」
「……うん」
愛梨は寂しげにそう口を開いた後、何かを訴えかけるように自分の胸に手を当てる。
そのタイミングで、小鳥は誇らしげに宣言した。
「愛梨のお兄さん、心配しないで下さい。愛梨は、私達が絶対に守りますから」
その声は何故か囁きのように愛梨の耳を打った。
「愛梨を守る。それが私達に課せられた使命だから」
小鳥は胸に手を当てて穏やかな表情を浮かべる。
まるでそれが以前から定められたことのように、小鳥は告げたーー。
それに呼応するように、花音は確固たる意思を固める。
「愛梨ちゃんをみんなで守ろう。小鳥ちゃん、愛梨ちゃんのサポート、お願い!」
「はい」
花音と小鳥が愛梨を護るために、通学路を必死に駆け抜けていく。
「奏良よ、状況はどうだ?」
「何とか、なっている。僕達を守るように、『アルティメット・ハーヴェスト』の人達が動いてくれているからな。とはいえ、さすがに現実世界では、僕達は『レギオン』と『カーラ』と戦う手段はない」
有が静かに告げると、サポートに回っていた奏良は疲れたようにため息をついた。
そこに、花音と愛梨が申し訳なさそうに有達の元へ駆け寄ってくる。
「奏良くん、お待たせ!」
「その、待たせてごめんなさい」
花音と愛梨の言葉に、奏良は一転して柔和な笑みを浮かべた。
「問題ない。愛梨を守ることが、僕の使命だ」
「……えっ?」
奏良の即座の切り返しに、愛梨はきょとんとした顔で目を瞬かせる。
その様子をよそに、花音は周囲を窺うようにしてから、こそっと小声でつぶやいた。
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