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留菜マナ
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第五百十五話 たった一つの誓い⑥

公開日時: 2024年9月20日(金) 16:30
文字数:1,034

「おじさん、おばさん!」


勇太はリノアの両親に視線を向ける。

リノアの両親は今も、救世の女神である美羅ーーリノアを一目見ようとする訪問者達を必死に引き留めていた。

勇太はぐっと涙を拭うと、真剣な眼差しで訴える。


「仮想世界の方も、絶対にリノアを救い出そうな!」

「ああ。必ず、リノアを救ってみせる」

「ええ。勇太くん、ありがとう」


勇太の意気込みに、リノアの両親は決意を込めて応える。

そして、リノアの病室に詰めかける人々を必死に引き留めていった。






勇太達が、『レギオン』と『カーラ』によって管理されていた病院からリノアを救い出した頃。

通学路では、愛梨を巡る戦いが激しさを増していた。


「愛梨、無理はするなよな。俺達が絶対に守ってみせるからな」

「……うん」


徹の配慮に、愛梨は小さく頷いた。

心細そうな愛梨のもとまで歩み寄ると、紘は優しく微笑んだ。


「愛梨、大丈夫だ。久遠リノアも先程、無事に病院から脱出できたという報告がきた。後は彼らの対処だけだ」

「……うん」


愛梨は寂しげにそう口を開いた後、何かを訴えかけるように自分の胸に手を当てる。

そのタイミングで、小鳥は誇らしげに宣言した。


「愛梨のお兄さん、心配しないで下さい。愛梨は、私達が絶対に守りますから」


その声は何故か囁きのように愛梨の耳を打った。


「愛梨を守る。それが私達に課せられた使命だから」


小鳥は胸に手を当てて穏やかな表情を浮かべる。

まるでそれが以前から定められたことのように、小鳥は告げたーー。

それに呼応するように、花音は確固たる意思を固める。


「愛梨ちゃんをみんなで守ろう。小鳥ちゃん、愛梨ちゃんのサポート、お願い!」

「はい」


花音と小鳥が愛梨を護るために、通学路を必死に駆け抜けていく。


「奏良よ、状況はどうだ?」

「何とか、なっている。僕達を守るように、『アルティメット・ハーヴェスト』の人達が動いてくれているからな。とはいえ、さすがに現実世界では、僕達は『レギオン』と『カーラ』と戦う手段はない」


有が静かに告げると、サポートに回っていた奏良は疲れたようにため息をついた。

そこに、花音と愛梨が申し訳なさそうに有達の元へ駆け寄ってくる。


「奏良くん、お待たせ!」

「その、待たせてごめんなさい」


花音と愛梨の言葉に、奏良は一転して柔和な笑みを浮かべた。


「問題ない。愛梨を守ることが、僕の使命だ」

「……えっ?」


奏良の即座の切り返しに、愛梨はきょとんとした顔で目を瞬かせる。

その様子をよそに、花音は周囲を窺うようにしてから、こそっと小声でつぶやいた。

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