「ねえ、お兄ちゃん。アイテム生成のスキルを使って、全ての罠を解除することはできないかな?」
「妹よ、時間はかかるが可能だ。その間、出現するモンスター達の相手を頼む!」
「うん!」
有の指示に、花音が勇ましく点頭する。
「なら、罠を全て解除したら、天井の先を調べることかできるね!」
右手をかざした花音は、嬉々とした瞳で天井を見上げた。
「はい。ただ、新たな複数の生命体が出現するのを感知しました」
「『カーラ』が新たに喚んだ召喚獣か。罠を解除するまでここを防衛するのは、骨が折れそうだな」
プラネットの警告に、奏良は不満そうに視線を逸らした。
「よーし、お兄ちゃんが罠を全て解除するまで、食い止めてみせるよ!」
鞭を閃かせたと同時に、花音は勇猛果敢に壁を蹴った。
「ーーっ」
先陣を切った花音はてきぱきと鞭を動かし、新たに召喚しようとした『カーラ』のギルドメンバー達を翻弄する。
だが、相手は高位ギルドのプレイヤー達だ。
容易く攻撃を喰らってはくれない。
『カーラ』のギルドメンバー達は、花音が振るった鞭を身体を反らし紙一重でかわした。
「あっ……」
完全に虚を突いたはずの攻撃を避けられて、花音は足を踏み止める。
「この先に行かせるな!」
その隙に『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達が新たに召喚した飛行モンスター達が目前に迫ってくる。
飛行モンスター達が一斉に花音に襲いかかろうとしたーーその時だった。
「花音、多少のダメージは堪えろ」
花音に迫り来るプレイヤー達に合わせて、奏良が放った銃の弾が全方位に連射される。
放たれた弾は、対空砲弾のように相手の攻撃にぶつかり、飛行モンスター達を怯ませた。
「マスターと愛梨様を渡すわけにはいきません!」
プラネットは吹っ切れた言葉ともに、両拳を迫ってきた飛行モンスター達に叩きつけた。
それと同時に高濃度のプラズマが走り、爆音が響き渡る。
煙が晴れると、召喚された飛行モンスター達は焼き尽くされたように消滅していった。
『元素還元!』
有はその隙に、天井に向かって杖を振り下ろす。
有の杖から、放射状の光が放たれる。
その光が、避雷針がある場所に触れた途端、とてつもない衝撃が周囲を襲った。
避雷針が、まるで蛍火のようなほの明るい光を撒き散らし、崩れ落ちるように消滅したのだ。
「罠はまだまだ存在しているようだ。全て解除するまで、先行きは長そうだな」
有の切羽詰まった声は再度、ぶつかり合った徹達とかなめの激突によって吸い込まれて消えた。
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