かなめの光の魔術を用いた明晰夢の力。
それは『カーラ』のギルドホームの出来事を想起させた。
「美羅が完全に覚醒した理想の世界へと呑み込もうしている。それはあの時、見た明晰夢と同じ内容……。信じがたい世界だ」
「美羅が完全に覚醒した理想の世界へと呑み込もうしているのね。それはあの時、見た明晰夢と同じ内容……。信じがたい世界ね」
望とリノアは辛辣そうに表情を歪めた。
あの時、見た明晰夢の内容は、今も鮮やかに望の記憶に焼きついている。
美羅の特殊スキルによって、かなめが見せた明晰夢の世界へと訪れたこと。
そこで、有達から語られた理想の世界の真実。
そして、紘が告げた、今後あり得るかもしれない未来の分岐点の一つだという事実。
どれもあまりに突然過ぎて、現実感がまるでなかったことを覚えている。
かなめの明晰夢の力に呑み込まれば、今度は望だけではなく、この場にいる全員がそれを体験することになるだろう。
しかし、望達にはその状況を跳ね返す手段があった。
「特殊スキルの力を使えば、この状況を打破することができるはずだ」
「特殊スキルの力を使えば、この状況を打破することができるはず」
望とリノアは剣を構え、活路を見出だすために周囲を見渡した。
包囲を崩そうとしても、すぐに強固な陣形を組まれてしまう。
しかし、これ以上、召喚されたモンスター達に再生能力を付与させないためにも、かなめの目を誘導してしなくてはならない。
そしてーー部屋の秘密を探るために、望達に今できること。
ーー特殊スキル。
先程の花音の言葉がヒントをくれた。
以前、見せられたかなめの明晰夢の世界で、紘が発した言葉が望の脳裏に蘇る。
『この世界は、未来の分岐点の一つだ』
あの日、予測できていた望の疑問に、紘は訥々とそう語ったのだ。
『明晰夢で見せられている世界とはいえ、今後、あり得るかもしれない未来の一つだ。だからこそ、私の特殊スキル、『強制同調(エーテリオン)』によって、この世界に干渉することができる』
『あり得るかもしれない未来……』
望は顔を片手で覆い、深いため息をつくと、状況の苛烈さに参ってきた神経を奮い立たせるようにして問いかけた。
『この世界から出る方法はないのか?』
『君の特殊スキルを使えばいい』
感情のこもった言葉。
だけど、ただ事実を紡いだ言葉に、望は視線を落とす。
『俺の特殊スキルは、既に愛梨に使っているだろう』
『君は、自分のスキルの力を分かっていない。持てる力を振るわないのは罪だ』
答えになっていない返答に、望はため息をつきたくなるのを堪える。
だからこそ、望は意を決したように、先程と同じーーだけど、別の言葉を口にしたのだ。
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