兄と妹とVRMMOゲームと

留菜マナ
留菜マナ

第四百ニ十一話 別の手段を模索して⑧

公開日時: 2023年10月27日(金) 16:30
文字数:1,052

「とにかく、今は手に入れた情報をもとにできることをしていこう。その上で、これからの方針を決めないとな」

「うん」


手を差し出してきた望の誘いに、花音は満面の笑顔で頷いた。

二人の手が重なる。


「また、みんなで普通のクエストを受けられるといいな」

「望くんと愛梨ちゃんは、これからも私達の仲間だよ!」


望の視線を受けて、花音は喜色満面で答えたのだった。






信也が収監されている牢から踵を返すと、望達は先程、話し合いの場を設けた部屋に戻るために歩を進める。


「勇太くん達は、これからどうするの?」

「俺達は……これからも望達と行動を共にするつもりだ。リノアを救うためにできる限りのことをしたいから」


花音の疑問を受けて、勇太は眸に決意の色を示す。そして、インターフェースで表示した王都、『アルティス』のマップを見つめた。


「リノアを元に戻したら、別の者が美羅の器になる。それを止めることはできないかもしれない」


それを聞いた徹は改めて、信也から明かされた事実を如実に語る。


「それなら、美羅そのものを消滅させる方法を突き止めるしかないよな。そして、その方法の手がかりを吉乃信也が持っているのは間違いない」

「ああ、そうだな」


徹の断言に触れて、勇太は想いを絞り出すように懇願する。


「頼む! これからもリノアを救うために望達の力を貸してくれないか!」

「……勇太くん」


思いの丈をぶつけられた望達は、その全てを正面から受け止める。


「ああ、リノアは守ってみせるな」

「勇太くん、これからも頑張ろうね」


望と花音は吹っ切れたように、勇太の申し出を承諾した。


「望、花音、ありがとうな」


勇太は清々しい顔を向けると、真剣な眼差しで決意を言葉に乗せた。


「絶対にリノアを救い出そうな!」

「ああ」

「うん、頑張ろうね」


勇太の意気込みに、望と花音は決意を込めて応えた。






「そういえば、リノアは今、どこにいるんだ?」

「別の部屋で休ませている。まだ、眠ったままだが、恐らく望が訪れたら目覚めるはずだ」


勇太の疑問に、徹は真剣な眼差しで捕捉する。

その言葉を聞いて、勇太は自身の希望を口にした。


「リノアに会ってきてもいいのか?」

「勇太よ、もちろんだ。ただ、望と一緒に行った方が、俺達のもとに連れて来やすいだろうな」


そんな彼の意を汲むように、有は自身の考えを纏める。


「分かった。望、一緒に来てもらえるか?」

「ああ」

「望くん、勇太くん。私もリノアちゃんのところに行きたい」


勇太の誘いに呼応するように、望は肯定する。

それに花音も付き添い、有達と一旦、分かれてリノアがいる部屋へと足を向けた。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート