その場に広がる動揺と困惑を代表して、望とリノアは賢に尋ねる。
「何故、そこまで言い切れるんだ?」
「何故、そこまで言い切れるの?」
「美羅様の真なる力が発動されれば、全ての者達が美羅様の影響を受ける。たとえ、特殊スキルの使い手だとしてもだ」
賢が明かした真実に、美羅の真なる力の神髄に気づいた望の瞳が見開かれる。
特殊スキルの使い手がいるギルドのメンバー達は、特殊スキルによる世界改変の影響を受けない。
それは、愛梨と吉乃美羅のデータの集合体である美羅の場合でも同じだ。
だが、美羅の真なる力が発動されれば、望達でさえ、あの理想の世界自体が今までの世界だと錯覚していくのだろう。
その矛盾した事実が正しい歴史として紡がれていくことに、望は戦慄してしまう。
「そして、美羅様は、君達を求めている。これからも、君達が真なる力の発動を促すように仕向けるだろう」
導き出された結論を前にして、望とリノアの真剣な表情が、一瞬でみなぎる闘志に変わる。
「なら、俺達は、どんなことをしても、それを阻止してみせる!」
「なら、私達は、どんなことをしても、それを阻止してみせる!」
「リノアは、そんなことをしない!」
望とリノアの決意に追随するように、勇太は続ける。
「構わない。君達が拒んでも、いずれ行われることだ」
望達の意見を聞いて、賢はすぐにその決断を下した。
洞窟の各所からは、いまだに戦いの音が遠雷のように響いてくる。
「「みんな!」」
「くっ!」
戦いが激化していく中、望達は『カーラ』のギルドメンバー達を一掃しながら、有達のもとへと駆けつける。
だが、有達の周りは、完全に『カーラ』のギルドメンバー達によって取り囲まれていた。
「「はっ!」」
望とリノアは、『カーラ』のギルドメンバー達を跳躍して、一足飛びに花音達の前に立った。
その瞬間、全てを確認することが、不可能なほどの攻撃が一斉に望達に殺到する。
「蒼の剣、頼む!」
「蒼の剣、お願い!」
「……の、望くん」
絶体絶命の危機を前にして、花音達の前に出た望とリノアは全ての攻撃を受け止めようと、それぞれの剣を構える。
流星のような光を放って、氷のつぶてを流れるような動きで弾くと、望とリノアは迫ってきたモンスター達の攻撃をいなした。
「……すごいな」
あっという間に、全ての攻撃を凌ぎきった望とリノアを前にして、勇太は唖然とした。
「俺も負けていられないな!」
望達の戦いぷりが、勇太の心に火を点ける。
露骨な戦意と同時に、勇太は一気に『カーラ』のギルドメンバー達との距離を詰めた。
『フェイタル・レジェンド!』
勇太は大剣を構え、大技をぶちかました。
勇太の放った天賦のスキルによる波動が、『カーラ』のギルドメンバー達を襲う。
「「はあっ!」」
「行くぜ!」
望とリノア、そして勇太の攻撃が、『カーラ』のギルドメンバー達を蹴散らしていく。
山のようにいる『カーラ』のギルドメンバー達の包囲網を、次々と崩していった。
「行きます!」
裂帛の咆哮とともに、プラネットは力強く地面を蹴り上げた。
「はあっ!」
「ーーっ!」
気迫の篭ったプラネットの声が響き、宙を舞っていた『カーラ』のギルドメンバー達は次々と爆せていく。
やがて、有達を包囲していた、『カーラ』のギルドメンバー達が一旦、退却していった。
「望、無事だったようだな」
道を切り開いてみせた望達の姿を見て、有は安堵の吐息を漏らす。
「だが、切りがないな」
奏良は威嚇するように、『カーラ』のギルドメンバー達に向けて、連続で発泡する。
弾が『カーラ』のギルドメンバー達の身体に衝突し、大きくよろめかせた。
だが、洞窟の入口までの道が開くことはない。
「有。このままでは、洞窟から出られない」
洞窟の通路を見据えながら、奏良は事実を冷静に告げた。
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