美羅の残滓を介して、機械都市『グランティア』に赴くことができる。
しかし、リノアの意識の覚醒の妨げになっているのは、美羅そのものだ。
それはリノアの意識を覚醒させるためには、美羅の残滓を消滅させる必要があるということだ。
そして、彼女が消滅すれば、機械都市『グランティア』から脱出することができなくなるかもしれない。
転移石を用いても、『キャスケット』のギルドホームに戻ってこれるとは限らないのだ。
話の段取りがまとまりつつある中、奏良は『』での出来事を思い返して渋い顔をする。
「『サンクチュアリの天空牢』と美羅の残滓の管理は、『アルティメット・ハーヴェスト』に任せている。容易には手出しできないはずだ。ただ、問題は、機械都市『グランティア』に赴けば、そこから脱出することができなくなるかもしれないということだな」
「そうだな」
奏良の真摯な通告に、望は苦々しい表情を浮かべた。
今まで赴くことができなかった本拠地への侵入。
『レギオン』と『カーラ』が、その対策を講じていないとは言い切れなかった。
「お兄ちゃん。まずは『サンクチュアリの天空牢』のダンジョンに行くんだよね」
「ああ。美羅の残滓を介して、機械都市『グランティア』に赴く必要があるからな。徹達が来た後、そのまま『サンクチュアリの天空牢』のダンジョンに赴こうと思っている」
花音の懸念に、有はインターフェースを使って、『創世のアクリア』のプロトタイプ版における、新たなマップの情報を一つ一つ検索する。
「望!」
「勇太くん!」
インターフェースを操作して『サンクチュアリの天空牢』のダンジョン内部を調べていた望達は突如、かけられた声に振り返った。
「遅くなってごめんな」
望達のもとに駆け寄ってきた勇太は居住まいを正すと、改めて遅れた事を謝罪する。
「皆さん、お待たせしてしまって申し訳ありません」
「おはようございます」
リノアの父親の真摯な対応に、望達もまた、挨拶を返す。
望達の懇意に触れて、勇太は昨日、判明した情報を整理した。
「リノアは、『アルティメット・ハーヴェスト』の管轄の個人病院で治療を受けている。『アルティメット・ハーヴェスト』の人達の話では、リノアの意識の覚醒の妨げになっているのは、美羅そのものらしい」
勇太は改めて、戦う意思を固める。
「美羅の残滓を消滅させたら、リノアはわずかの間だけでも意識を取り戻すことができるかもしれない。そうすれば、美羅を消滅させることができるはずだ! 頼む! これからも望達の力を貸してくれないか!」
「……勇太くん」
思いの丈をぶつけられた望達は、その全てを正面から受け止める。
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