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留菜マナ
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第五百五十ニ話 決着の時③

公開日時: 2025年1月10日(金) 16:30
文字数:1,112

「えっ? ニコットちゃんを倒すの?」


望の発案に、花音は驚きの表情を滲ませる。

『レギオン』は当初の予定どおり、ニコットの力を行使して、望と愛梨を捕らえる腹積もりだ。

なら、逆にそれを利用すればいいという望の結論は有は突き動かす。


「望よ、ニコットを倒して、美羅を完全に消滅させるつもりなのか」

「ああ」


他の誰でもない、ニコットを倒す。

望のその決断はこの戦いを終着点へと収束していく要になった。


「残りMPが厳しい。風の魔術を付与するのは望と勇太だけだ」


奏良は風の魔術を使い、望達の武器に魔力を込めていった。武器が変色していく。


「くっ……!」


賢は窮地に立たされた気分で息を詰める。


まるでその思惑は無為に終わる行為だったようにーー。


距離を取った瞬間、勇太は仕切り直す。


「行くぜ」


勇太は高位ギルドの猛者達に向かって身を投げ出した。


『フェイタル・レジェンド!』


勇太は大剣を構え、大技をぶちかました。

勇太の放った天賦のスキルによる波動が、『レギオン』の召喚のスキルの使い手達を襲う。

新たにモンスターを召喚しようとしていた彼らは後方に吹き飛ばされた。

賢の助力に心血を注いでいた『レギオン』の召喚のスキルの使い手達は怯む。


「妹よ、突破口を頼む」

「うん」


有の指示に、アルビノの鞭を振るっていた花音は勇ましく点頭した。


「よーし、一気に行くよ!」


花音は跳躍し、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達へと接近した。


『クロス・リビジョン!』


今まさに望達に襲いかかろうとしていた『レギオン』のギルドメンバー達に対して、花音が天賦のスキルで間隙を穿つ。

その瞬間、凄まじい力が流れるように放たれる。

花音の鞭に搦(から)め取られた瞬間、鞭状に走った麻痺の痺れによって、『レギオン』のギルドメンバー達は身動きを封じられた。

さらに追い打ちとばかりに、花音は鞭を振るい、何度も打ち据える。

そこに、勇太が賢にとっては死角から現れた。


「行くぜ!」


勇太の振るった大剣が、意識を紘に集中していた賢に叩きつけられる。


「くーーっ」


咄嗟の判断で回避行動を取った賢は、直後にそれが取り返しのつかないミスであったことに気づいた。


「これで終わりだ!」


賢の回避した方向には望が迫っていた。

望は気迫を込めて乾坤一擲の技を放つ。

望の声に反応するように、蒼の剣からまばゆい光が収束する。

剣の刀身が燐光(りんこう)を帯びると、かってないほどの力が満ち溢れた。


「奏良……頼む!」

「喰らえ!」


望の呼び掛けと同時に、奏良は距離を取って続けざまに四発の銃弾を放った。

弾は寸分違わず、賢に命中する。

HPを示すゲージは少し減ったものの、いまだに青色のままだ。


「その行動は予測済み――」


不意に、賢の言葉が途切れる。

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