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留菜マナ
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第五百二十五話 美羅の定義⑧

公開日時: 2024年10月25日(金) 16:30
文字数:1,039

「昨日まで、イリス達が索敵してくれていたからな。それに『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドメンバー達はロビーにいる」

「心強いな」

「心強いね」


徹の説明に、望とリノアは納得したように頷いた。


「と、徹くん、これからどうするの?」

「まずは、ロビーに向かおうと思っている。そこからなら、あの部屋まで直行できるからな」


花音の焦ったような疑問を受けて、徹はインターフェースで表示した『サンクチュアリの天空牢』のマップを見つめる。


「ここからは慎重に進んでいかないとな」

「ここからは慎重に進んでいかないとね」


望達はガーゴイル達を振り切り、『サンクチュアリの天空牢』のロビーへと足を踏み入れた。

城門を護っていたガーゴイル達は、城に入った望達を追ってはこなかった。

しかし、ロビーで待ち構えていた『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドメンバー達が、望達の存在に気づき、こちらに視線を集中させた。


「「……っ」」


最終決戦に向けた意気込み。

まるで見定めるような凝視に、望とリノアは固唾を呑む。


「これから、上位ギルド『キャスケット』の警護に当たる。『レギオン』と『カーラ』側に動きがないとは限らない。警戒を怠らないようにな」

「承知致しました」


徹の指示に、『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドメンバー達は丁重に一礼する。

そんな中、周囲の様子を窺っていたプラネットは、真剣な眼差しで徹を見つめた。


「徹様。ここから部屋まで、どうやって赴くのでしょうか?」

「ああ。転送石を用いて行くんだ」


プラネットの懸念に、徹はぐるりと周囲へと目線を巡らせた。


「ロビーから転送石で行けるの?」

「ああ。行けるように、魔術を練っている」


花音の疑問に応えるように、徹は転送石を掲げる。

持っているアイテムが光り、望達は『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドメンバー達とともにその場から姿を消した。


「「ここは……」」


いつの間にか、望達の周囲の光景が変化していた。

壁は周囲に眩しく照らす黄金色に変わっている。

金色に輝く部屋は豪華絢爛で、まるで宝物庫のようだった。


「あの時の部屋だな」

「あの時の部屋だね」


望とリノアは神秘的な周囲の光景を目の当たりして驚きを口にする。


「転送石で、ロビーからあの部屋に赴くことができるなんてすごいな」

「転送石で、ロビーからあの部屋に赴くことができるなんてすごいね」

「ああ。ギミックの解除なしで行けるとは思わなかったな」


望とリノアが気持ちを切り替えるように一呼吸置くと、奏良は感極まったようにため息をついた。

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