「残滓と化した思念、美羅の残滓を全て消滅させるのは、『アルティメット・ハーヴェスト』側に任せてほしい。その上で、『キャスケット』側とともに、リノアの意識を完全に取り戻すための方法を探っていこうと思っている」
「ああ。父さんと母さんには、ギルドの管理を任せている。何か分かったら、すぐに連絡してほしい」
徹の言葉を引き継いで、有は少し逡巡してから答えた。
「じゃあ、ここにいる私達は全員、機械都市『グランティア』に行けるんだね?」
花音は両手を前に出して、水を得た魚のように目を輝かせる。
「その通りだ、妹よ。だが、奏良が言ったとおり、機械都市『グランティア』に赴けば、そこから脱出することができなくなる」
これから置かれる状況の答えを探すように、有は声を落とした。
「万全の対策を練る必要があるな」
「万全の対策を練る必要があるね」
厄介であると望とリノアは眉を寄せる。
「五大都市の一つ、機械都市『グランティア』か。全てが未知数だな」
勇太は一息つくと、事態の重さを噛みしめる。
そこで、最後の戦いに向けての話は、一先ず終わりを告げた。
「とにかく、ここで話し合っても埒が明かない。まずはここにいる美羅の残滓に接触して、機械都市『グランティア』に赴くぞ。機械都市『グランティア』から脱出する方法は、いずれ見出ださせるはずだ」
部屋を改めて見て、有はすぐにその決断を下した。
「有。君は人使いが荒い上に、全く効率的ではない。そもそも、万全の対策を練る流れじゃなかったのか」
有の提案に、奏良は懐疑的である。
だが、それでもこの状況を打破するためには、それしかないと奏良は悟った。
既に、世界規模で、『レギオン』と『カーラ』の企みが社会の中枢にまで食い込んできていたからだ。
一刻の猶予もならない状況の中、望の胸に様々な情念が去来する。
機械都市『グランティア』に赴いて、美羅を消滅させる方法の足掛かりを掴む。
美羅の残滓を全て消滅させて、リノアの意識を完全に取り戻す。
そして、『創世のアクリア』のプロトタイプの開発者達の暗躍に備える必要がある。
望は頭の中に溢れる、これからおこなわないといけない情報を整理した。
正直、やることが多すぎて、手詰まり間が否めない。
「ここにいる美羅の残滓を消滅させたら、リノアの意識が少し目覚めるかもしれないんだよな」
「ここにいる美羅の残滓を消滅させたら、私の意識が少し目覚めるかもしれないんだよね」
複雑な心境を抱いたまま、望とリノアは天井を見上げる。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!