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留菜マナ
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第四百四十九話 君が原色に変わるまで④

公開日時: 2024年2月2日(金) 16:30
文字数:1,096

「このまま、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバーに扮して、ロビーで合流を果たすぞ!」

「空を飛ぶのってすごいねー!」


有と花音が大きく身体を動かすと、突き抜けるように空へと駆け上がった。

有達を追って、望達もまた空へと跳躍する。

高積雲を突き抜けると、どこまでも果てがないような青空が、望達の視界一面に広がった。

周辺には、数多くの浮き島が点在しており、そこには複数のダンジョンの姿が見受けられる。

その中に、明らかに異彩を放っている建造物があった。


「相変わらず、お城みたいなダンジョンだな……」


勇太が呆気に取られたようにつぶやいた。

姿を現したのは、想像していたような堅固な牢獄ではなく、童話の中に出てくるような美しい白亜の城だった。

パステルカラーの石を用いた西洋建築の城であり、幾つもの尖塔が並んでいる。

尖塔の天辺は、色も千差万別で統一されていない。

城は浮き島に根差しておらず、分厚い雲の上に建っている。

雲は積乱雲よりも白が濃く、綿花のような雰囲気を醸し出していた。


「よーし、行くよ!」

「ああ」

「うん」


城門の前に降り立った花音は、望達の行動を牽引(けんいん)する。


「望、奏良、プラネット、勇太、リノアよ、このまま、あの城に入るぞ!」

「ああ、分かった」

「うん、分かった」


有の指示に、望達は花音の後を追い、城門へと降り立った。

だが、城門には以前、変わらず、ガーゴイル達が待ち構えていた。


「「はあっ!」」


望とリノアは剣を一閃すると、入口付近で待ち構えていたガーゴイル達が吹き飛ぶ。

その隙を突いて、望達は城門に迫る。

極大の白い鉄門の下。

大地の代わりになっている雲は、しっかりと足場を形成していた。


「もう、開いているのかな」


花音は巨大な鉄門の引き手を掴む。

すると力を入れたわけでもないのに、鉄門は蝶番(ちょうつがい)の軋む音を響きかせる。

望達を招き入れるように、鉄門は内側に開いていった。


「昨日まで、イリス達が索敵してくれていたからな。それに『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達はダンジョン内にいる」

「そうだな」

「そうだね」


徹の説明に、望とリノアは納得したように頷いた。


「と、徹くん、これからどうするの?」

「まずは、ロビーに向かおうと思っている。『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバーとして、彼らの中に紛れ込まないといけないからな」


花音の焦ったような疑問を受けて、徹はインターフェースで表示した『サンクチュアリの天空牢』のマップを見つめる。


「ここからは慎重に進んでいかないとな」

「ここからは慎重に進んでいかないとね」


望達はガーゴイル達を振り切り、『サンクチュアリの天空牢』のロビーへと足を踏み入れた。

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