「このまま、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバーに扮して、ロビーで合流を果たすぞ!」
「空を飛ぶのってすごいねー!」
有と花音が大きく身体を動かすと、突き抜けるように空へと駆け上がった。
有達を追って、望達もまた空へと跳躍する。
高積雲を突き抜けると、どこまでも果てがないような青空が、望達の視界一面に広がった。
周辺には、数多くの浮き島が点在しており、そこには複数のダンジョンの姿が見受けられる。
その中に、明らかに異彩を放っている建造物があった。
「相変わらず、お城みたいなダンジョンだな……」
勇太が呆気に取られたようにつぶやいた。
姿を現したのは、想像していたような堅固な牢獄ではなく、童話の中に出てくるような美しい白亜の城だった。
パステルカラーの石を用いた西洋建築の城であり、幾つもの尖塔が並んでいる。
尖塔の天辺は、色も千差万別で統一されていない。
城は浮き島に根差しておらず、分厚い雲の上に建っている。
雲は積乱雲よりも白が濃く、綿花のような雰囲気を醸し出していた。
「よーし、行くよ!」
「ああ」
「うん」
城門の前に降り立った花音は、望達の行動を牽引(けんいん)する。
「望、奏良、プラネット、勇太、リノアよ、このまま、あの城に入るぞ!」
「ああ、分かった」
「うん、分かった」
有の指示に、望達は花音の後を追い、城門へと降り立った。
だが、城門には以前、変わらず、ガーゴイル達が待ち構えていた。
「「はあっ!」」
望とリノアは剣を一閃すると、入口付近で待ち構えていたガーゴイル達が吹き飛ぶ。
その隙を突いて、望達は城門に迫る。
極大の白い鉄門の下。
大地の代わりになっている雲は、しっかりと足場を形成していた。
「もう、開いているのかな」
花音は巨大な鉄門の引き手を掴む。
すると力を入れたわけでもないのに、鉄門は蝶番(ちょうつがい)の軋む音を響きかせる。
望達を招き入れるように、鉄門は内側に開いていった。
「昨日まで、イリス達が索敵してくれていたからな。それに『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達はダンジョン内にいる」
「そうだな」
「そうだね」
徹の説明に、望とリノアは納得したように頷いた。
「と、徹くん、これからどうするの?」
「まずは、ロビーに向かおうと思っている。『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバーとして、彼らの中に紛れ込まないといけないからな」
花音の焦ったような疑問を受けて、徹はインターフェースで表示した『サンクチュアリの天空牢』のマップを見つめる。
「ここからは慎重に進んでいかないとな」
「ここからは慎重に進んでいかないとね」
望達はガーゴイル達を振り切り、『サンクチュアリの天空牢』のロビーへと足を踏み入れた。
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