「美羅様の特殊スキルの力は解放された。私達もまた、美羅様のご加護によって、『明晰夢』という神のごとき力を授かった。だが、まだ、一手足りない」
賢のつぶやきが、ギルドホーム内に不気味に木霊した。
「美羅様がいれば、私達の求めている理想の世界はこのまま実現し続ける。その理想を永続的に成し得るためには、美羅様が椎音愛梨の特殊スキルを使用しなくてはならない。その時、真の意味で『レギオン』と『カーラ』は世界を救った救世主だとして称えられ、全ては美羅様のーー私達の思いのままになる」
「それが、おまえ達の狙いか……」
勇太は乱れた心を落ち着かせるように、大剣を強く握りしめた。
「さて、勇太くん、どうする? 私達を止めたいのだろう?」
悪い予感を振り払うように頭を振ると、勇太は満面の笑みを浮かべる。
その時、曖昧だった思考に与えられる具体的な形。
「俺一人の力じゃ倒せないなら、望達の力を借りるだけだ」
次に繋げるために、未来への足掛かりを残す。
ほんの少しの行動が、未来を変えることができるって信じているから。
「これで決める!」
望が構えた蒼の剣から、まばゆい光が収束する。
蒼の剣からは、かってないほどの力が溢れていた。
「蒼の剣、頼む!」
花音達の前に出た望は、蒼の剣を構える。
流星のような光を放って、モンスター達を流れるような動きで弾くと、望は迫ってきた『レギオン』のギルドメンバー達の攻撃をいなした。
「これでどうだ!」
望はそのまま、虹色の剣を横に薙いだ。
光の連なりが、剣筋とともに閃く。
賢とニコットのHPは一気に減ったが、倒すまでには至らない。
しかも、賢には『完全回復』という強みがある。
「何をしようと、私達が有利なのは変わらない」
「なら、さらに叩き込んでみせる!」
望は身体を回転させ、遠心力に乗せて剣を振る。
そして、疾駆の速さで、モンスター達を何度も肉薄した。
『クロス・レガシィア!』
望の剣戟が放たれると同時に、花音は協力技とばかりに天賦のスキルで間隙を穿つ。
隙を突いた花音のスキルに、ターゲットとなったモンスター達は完全に虚を突かれた。
花音の鞭によって、宙に舞ったモンスター達は凄まじい勢いで地面へと叩き付けられる。
「おまえとは、ここで決着をつけてみせる!」
勇太は静かな闘志を纏って大剣を手に地を蹴った。
だが、賢に迫る間際に、勇太と並走したのは望だった。
「これで終わりだ!」
望の特殊スキルと愛梨の特殊スキル。
それが融合した蒼の剣。
モンスターが放った炎の連撃をかわすと、望は乾坤一擲のカウンター技を放つ。
望の声に反応するように、蒼の剣からまばゆい光が収束する。
蒼の剣の刀身が燐光(りんこう)を帯びると、かってないほどの力が満ち溢れた。
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