「行け!」
体勢を崩した賢目掛けて、徹はここぞとばかりに光龍を使役したからだ。
光龍は身体を捻らせて賢へと迫った。
「……っ」
虚を突かれたせいなのか、賢は体勢を立て直すこともできずにまともにその一撃を喰らう。
『フェイタル・ドライブ!』
勇太が大きく大剣を振りかぶり、光の刃が波動のように賢へと襲いかかった。
万雷にも似た轟音が響き渡る。
「ーーっ」
迷いのない一閃とともに、勇太の強烈な一撃を受けて、賢は怯んだ。
賢のHPが一気に減少する。
頭に浮かぶ青色のゲージは、半分まで減少していた。
勇太は畳み掛けるように、賢の間合いへと接近する。
「『星詠みの剣』!」
だが、賢が剣を掲げた瞬間、賢の周りに淡い光が纏う。
その瞬間、賢のHPゲージは、あっという間に半分から全快の青色に戻っていた。
「なっ!」
起死回生を込めた技を覆されて、勇太は虚を突かれたように呆然とする。
『星詠みの剣』の光の魔術の付与効果。
それは『完全回復』だった。
「完全回復か……」
「ああ」
驚愕する勇太を尻目に、賢は一呼吸置いてから付け加えた。
「つまり、君が私を倒すためには、一撃必殺の攻撃を放って、私を戦闘不能にするしかないということだ。だが、今の君にはその力はないはずだ」
「一撃……」
賢の表情を見て、勇太は察してしまった。
一撃必殺を決めるためには、圧倒的な強さが必要になる。
賢の指摘どおり、今の勇太にはそのような力はない。
たとえ、『サンクチュアリの天空牢』で新たに覚えた『フェイタル・クロノス』を使っても、賢を一撃で倒すことは困難だろう。
「まだだ! 回復するというのなら、回復する暇を与えないくらい、何度でも叩き込んでやる!」
「なるほど。そういった理論もあるな」
幾度も繰り出される互いの剣戟。
超高速の攻防を繰り広げながら、賢は勇太の意気込みを感心する。
『エアリアル・アロー!』
奏良が唱えると、無数の風の矢が一斉に、モンスターへと襲いかかる。
賢は一拍だけ間を置くと、厳かにーーまるで神事を執り行う祭司の如く言った。
「私達と君達、どちらの想いが上か、今度こそ決着をつけようか」
晴れやかな表情さえ浮かべて、賢はそう告げる。
「本当の意味での仮想世界、そして現実世界、世界の全ての支配を」
「世界の全ての支配?」
壮大な計画を発する賢の声が、望達の耳朶(じだ)に否応なく突き刺さった。
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