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留菜マナ
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第四百七十七話 あの世界を生きた君は今⑧

公開日時: 2024年5月10日(金) 16:30
文字数:1,059

「光龍、目障りな!」


立ち塞がった光龍を前に、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達が不愉快な顔を浮かべて警戒した。


「よし、行け!」


光龍とかなめが相対する中、徹は光龍を使役する。

徹が行使する光龍は、身体を捻らせてかなめへと迫った。

だがーー。


「ーーっ」


だが、別のモンスターの群れが不意を突いて包囲してきたことで、光龍は動きを阻まれる。


「徹様!」


イリスはすかさず徹の加勢に向かう。

躍動する闇と槍の光が入り乱れる戦場を、イリスは凄まじい速度で上空から駆ける。

彼女の繰り出す斬撃は早く鋭く、光龍を包囲しているモンスターを切り裂いていく。


「恐れる必要はありません」


凛とした声が、室内に響き渡った。

前に進み出たかなめは、無感動に望とリノアを見上げる。


「蜜風望。あなたは『明晰夢』の中で、理想の世界を垣間見たはずです」


かなめは両手を広げて、静かな声音で告げた。


「あなたは今、愚かなことをしています。シンクロは、あなた方と美羅様を繋ぐ希望です。未来の趨勢(すうせい)は、あなたの手にかかってーー」

「とにかく、愛梨も紘も、そして望も、おまえ達に渡すつもりなんてないからな!」


かなめの説得を打ち消すように、徹はきっぱりとそう言い放った。


「鶫原徹、そして『アルティメット・ハーヴェスト』が誇るNPC。あなた方の妨害のせいで、私達の作戦は破綻しました」

「当たり前です。私の役目はその作戦を破綻させることですから」


憐れむようなかなめの言葉に呼応するように、気迫の篭ったイリスの声が響き渡る。


「「勇太くん!」」

「望、リノア、任せろ!」


望とリノアの声に呼応するように、勇太がかなめにとっては死角から現れた。


「行くぜ! 全て打ち倒してみせる!」


勇太の振るった大剣が、意識を徹達に集中していたかなめに叩きつけられる。

だが、その直前にかなめは光の魔術によって、その一撃を防いだ。


「勇ましいですね。ですが、倒しきるその前にあなたの魔力が尽きるのが先だと思います」

「だからなんだ。勝てないからって、戦わない道理はない」

「ーーっ」


勇太の振るった大剣がかなめを狙う。

咄嗟の判断で回避行動を取ったかなめは、直後にそれが取り返しのつかないミスであったことに気づいた。


「これで終わりだ!」

「これで終わらせる!」


かなめの回避した方向にはいつの間にか、望とリノアが迫っていたからだ。

望とリノアは気迫を込めて乾坤一擲の技を放つ。

望とリノアの声に反応するように、それぞれの剣からまばゆい光が収束する。

二人の剣の刀身が燐光(りんこう)を帯びると、かってないほどの力が満ち溢れた。

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